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第十話<早まる出現>-4

高い買い物の後、三人は近くのファミレスで昼食を取っている。

銃の事もあり、ここの会計は蘭子が持つことになっていた。

するとここぞとばかりに大量に食べる琴和。

その姿は蘭子を不機嫌にさせていた。


「何か私、恨みを買うようなことした?」

「自分の胸に聞いてみろ。」

不満げに口に運ぶスープは不味そうに見えるが

それでもガツガツと食べる琴和。

一方櫻子はニコニコしながら目の前の水を見ている。

彼らが座っている席は、窓越しの四人がけのテーブル席で、

歩道を歩く人からは良く見える位置だった。

ファミレスは歩道に面して立っているので、壁を一枚越えたらそこは

歩道という感じである。


「今日の夕食何にしようか?」

「上手いもの。」

「それじゃ答えになってないでしょ。」

考える素振りを見せない琴和にとりあえず突っ込みを入れると、櫻子が提案をする。

「湯豆腐なんてどう?」

その言葉を聞くと驚いた表情を見せ、櫻子を見る二人。

「ハンバーグじゃない・・・。」

「一体どうしたんですか?」

「どういう意味よ、それ!!」

思わず突っ込みを入れる櫻子。しかしすぐに表情が冷めたものになる。

彼女の視線は窓の外に向けられているようだった。

恐る恐る視線を移動させる琴和。するとそこには早間の姿があった。


「早間さん?」

窓をノックすると、店の入り口に向かう早間。

「知り合いなの?」

蘭子が不思議そうに聴いてくると、琴和はうなずく。

「ああ、甲子郎さんの知り合いで村雲の人だって。

一度少し話した程度だよ。」

簡単に説明を済ませた後、早間が近寄ってくる。


「やあ、お久しぶり。すこしお邪魔してもいいですか?」

「ええ、どうぞ。」

断ることもなく、席をつめて隣に案内する琴和。

「すみませんね。」

そう言って腰をかけると、目の前で気まずそうな顔をした櫻子に気が付く。

「以前は失礼しました。お見苦しいところを見せてしまいましたね。」

爽やかな素振りで櫻子に話しかけるが、櫻子は目を合わせなかった。

その様子を見ると、早間は表情はそのままで話しを続ける。

「そうそう、以前何処かでお会いしたと感じたのですが、あれは勘違いでした。

禦の受付の女性に貴女とそっくりな方がいらっしゃいましてね。

その女性と間違えていました。二週間前にその人に会って話をしたら笑われちゃいましたよ。」


「そう・・・なんですか?」

櫻子が恐る恐る視線を早間に向ける。すると笑顔のままの早間が写る。

「ええ、そうですよ。」

そう言うと、蘭子の方を向く早間。

「貴女は始めましてですね。私は早間 卓、村雲の者です。

楠木 蘭子さんですよね?」

「え?」

自分の名前を知っていて驚く蘭子。

「矢子ちゃんから話を伺っていますよ。いつもお世話になっているようで。」

「矢子ちゃんが?」

「言ったでしょう、村雲の者ですって。

一応彼女とは知り合いなんですよ。」

「そうだったんですか?」

「ええ、貴女の作る料理は絶品だとか。一度お呼ばれしたいですね。」

気障な台詞を蘭子に持ちかけると、琴和は横から話しかける。

「別に良いですけど、甲子郎さんも一緒ですよ。」

すると琴和に視線を移して困った顔をする。

「あはは、瀬戸がいるなら無理かもしれないですね。」

「甲子郎さんと知り合いなんですか?」

蘭子が質問をすると早間は「ええ。」と簡単に返し一呼吸置く。


「あいつとはそうですね、腐れ縁・・・としておきましょうか。」

そう言うと立ち上がる早間。

「今日の夕食、まだ決めていないのでしたらメザシを付け加えていただけませんか?

あとデザートにプリンを。」

「メザシとプリン?」

「ええ、きっと面白いですよ。」


笑みを浮かべてその場を立ち去る早間。

本当にあっという間の出来事で、何をしに来たのか正直分からないくらいだった。

そして彼が店を出る頃に櫻子が疑問を投げかける。

「湯豆腐にメザシとプリンって合うかな・・・?」

「・・・どうだろ。とりあえず用意してみますよ。」

そう言うと琴和の皿を見る蘭子。するともう食事が済んでいることに気が付く。

「いっぱい食べたよね。大丈夫?少し休もうか?」

「いや、大丈夫。行こうか。買い物済ませて家でゆっくりしよう。」

伝票を手に取る蘭子。琴和が「ご馳走様。」と言うと「荷物持ちよろしく。」と返す。


「じゃあ豆腐とメザシとプリンを買って帰りましょうか。」

先に店の外に出た琴和は櫻子に話しかけると、彼女は「はい。」と返した後に空を見上げる。

「今日は良いお天気ですね。」

その言葉に釣られるように空を見上げる琴和。そして「そうですね。」と簡単に返した。

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