第八話<関わりを深めて>-12
「・・・予想外に上手いな。」
「どういう意味ですか、それ。」
手作りの夕食を食べながら甲子郎が思わずつぶやくと、
蘭子が引っ掛かってくる。
三人はあれから直ぐに引き上げ蘭子の家に向かった。
道中では特に問題は無く怪物には遭遇しなかった。
負傷をしたと思われた矢子も、我慢をしている様子は無く、
本人が言った通り大丈夫のようだった。
「いや、純粋に美味しくって感激しているだけだ。」
慌てて切り返すと琴和を見る甲子郎。どうやらフォローをしろと言っているのであろう。
「それにしてもゴメンね、急に時間を早めちゃって。」
すると蘭子は何気ない顔で答える。
「ああ、別に平気だったよ。むしろ時間を持て余していたくらいだし。」
そう言うと矢子を見る蘭子。すると昨日と同様に
黙々と食べている。本当は『おいしい?』と話しかけたかったが、
それで箸が止まるかもしれないと思って止めることにした。
「そういえば今日はどうだった?」
変わりに琴和に質問をする蘭子。
すると琴和は疲れた表情を見せる。
「大変だったよ。カザーバの人たちと遭遇しちゃってさ。」
「え!?」
その言葉を聞いて驚く櫻子。
「どうなったの?」
蘭子が聞くと、琴和は甲子郎と矢子を指差す。
「ご覧の通り皆無事。相手も逃げちゃったけど
今はこうして美味しくご飯を食べられているから問題無しかな。」
「相手は強くなかったの?」
「いや、強かったよ。だって手から光線を出したり
指差した物を爆発させるんだよ。もうどうなることかと思ったよ。」
琴和がそう話すと、甲子郎は矢子に話しかける。
「確かに今日は危なかったな。」
すると箸を止める矢子。
「はい、お二人にはご迷惑をおかけしました。」
「今後はどうするつもりだ?」
甲子郎がそう聞くと、矢子は少し考えた後に答える。
「こんな危険な人が徘徊している事が分かった以上、
余計に放っとけなくなりました。今まで通り巡回を続けます。」
真剣な眼差しを甲子郎に向ける矢子。その姿を見ると琴和は言葉を失う。
「何でそこまでするんだ?禦や村雲に任せればいいことだろう?」
「ですが実際に禦や村雲はさほど動いていません。
現に魔物を一番倒しているのは私だと思います。」
そう言われると両手を軽く挙げる甲子郎。
「確かに、それは否定できない事実だな。」
「そして何より、私は自分の力を正しく活用していきたいんです。」
甲子郎の台詞に、矢子が再び言葉をつなげると、箸を置く。
「私の父は、とても強い人でした。
見た目は体格が良いこともあって怖かったのですけど、
決して力を間違ったことには使わなかったんです。
よくボランティアにも行っていましたし、いずれは福祉の仕事に就きたいと
言っていました。自分の自慢の体力を使って
多くの人を助けたい。それが父の口癖でした。」
そして甲子郎を見つめる矢子。
「私はそんな父の考えが好きでした。
だから私は自分の持つ力で人を守っていきたいんです。」
その言葉を聞くと、琴和は胸を打たれる。
それは感動に近いもので、気がついたら矢子に提案をしていた。
「それ、俺も手伝うよ。」
「え!?」
「その考え、物凄く共感できる。だから俺も一緒に戦うよ。」
「そんな、でも。」
すると蘭子が横から入ってくる。
「遠慮しちゃダメよ、今日も危なかったんでしょ?
そうしたらやっぱり私たちも協力しないとね。」
「蘭子もやる気なの?」
「当然、それに矢子ちゃんの食生活とファッションが
気になって仕方が無いしね。」
「食生活まで気になるのか。」
「そりゃそうよ、そうだ、じゃあこれからは
晩御飯食べてから出かけようよ。二人は家が近いんでしょ?
そうしたら小田原さんの家に作りに行くよ。」
「ああ、それいいな。じゃあ矢子ちゃんも明日から家に
夕方くらいからおいでよ。」
勝手に話を進める二人に戸惑う矢子。
「あの、お気持ちは嬉しいのですけど私は・・・。」
すると甲子郎は軽く微笑して話しかける。
「おい、ちゃんと俺の分まで作ってくれるんだろうな?」
「あ、甲子郎さんも参加します?」
「当然だ。」
そう言うと矢子に話しかける甲子郎。
「まあ良いじゃねえか、今日もカザーバの力を思い知っただろう?
しばらく俺等とつるんでも悪くないと思うぜ。」
すると矢子は不思議そうに甲子郎を見る。
「何で正式に村雲ではない私や一般人の二人が
この件に関わろうとしているのを止めないんですか?」
すると甲子郎は矢子に視線を合わせる。
「お前の戦う理由が気に入ったからだ。」
そう言うと、お茶を一気に飲む甲子郎。
「すまねえ、茶をくれ。」
「はいはい。」
やかんを持ってくる蘭子。そのままお茶を注ぐと
再び座る。
すると矢子は全員を見つめて口を開く。
「じゃあ明日、19時くらいからよろしくお願いします。」
その台詞を聞くと、琴和は嬉しそうに反応をする。
「OK、じゃあその時間に家に着てね。」
すると蘭子は急に立ち上がる。
そして引き出しの中から紙袋を取り出してきた。
「そうと決まったらコレ!!
ちゃんと着こなすのよ。」
楽しそうな笑顔で袋を差し出すと戸惑う矢子。
「あの、これは?」
「一応古着よ。
とは言ってもサイズを間違って買ったのとか、
一回しか着なかったものばかりだからキレイなはず。
あげるから着こなしてね!」
「そんな、受け取れません!」
慌てる矢子。
「いいのよ、あっても着ないで溜まっていくだけなんだから。
押入れの中で腐らせるより、矢子ちゃんに着てもらった方が
コッチも心が休まるのよ。」
袋を開けてみると、流行に則った服が数多く入っていた。
その数を見て質問をする琴和。
「何でこんなにあるんだ?」
「いやぁ、どうしてもパッと見て良いと思ったら
買っちゃうんだよね・・・。それが積もりに積もって・・・。」
そう聞くと呆れながらも納得をして矢子の肩をポンッと叩く。
「そう言っているんだ、貰っちゃいなよ。」
「そうそう、そんな綿パンにワイシャツを突っ込んでいる服装じゃダメ!
大人しくこの服を着なさい!」
そう指摘されると、顔を赤らめて自分の服装を見る矢子。
「・・・それじゃあいただきます。」
その様子を見ていると、甲子郎は思わずにやけてしまう。
そして少し高い位置では
心配そうな表情の中に、少し笑みを浮かべた
櫻子が全員の表情を見守っていた。
<第八話 関わりを深めて -終->




