第六話<仮面>-2
「昨日は大変だったようね。」
薄暗い局長室に呼ばれた甲子郎が
局長に昨夜の報告をしている。
部屋には他に誰もおらず、静かにやり取りが進められていた。
「それにしても、嘉島相手によく無事だったわね。
流石といったところかしら。」
「買いかぶらないでください。結局は逃してしまいました。」
頭を掻きながら甲子郎がそう言うと、
局長の麗華は軽く微笑み腕を組んで話を続ける。
「長野では嘉島に遭った局員はほとんど死に、生き残れても
重症だったのよ。無傷は瀬戸君と琳が初めてじゃないかしら?」
そう言うと甲子郎は軽く首を振り答える。
「長野に派遣された局員は力の弱い者や未熟な者もいたようでした。
嘉島の連勝記録はそれも影響していますよ。」
「どう、嘉島と遣り合って。手に負えそう?」
「ここは格好良く任せてくださいと言っておきますよ。
どんな隠し玉が出てくるのか検討がつきませんけどね。
ただ、分かることは下手に局員には嘉島に手を出させないでください。
例えそれが戦術局でもです。
嘉島相手では、それなりに腕が立つ者ではないと
命を無駄にするだけです。」
すると麗華は軽くうなずく。
「分かった、それは広めておくわ。
あと、嘉島を援護した青年についてだけど、
彼についてはどうかしら?」
「嘉島は彼のことを”シュウヤ”と呼んでいました。
それが名前でしょう。
また彼の術も切れがあり、俺も琳も
避けるので精一杯でした。
彼も危険人物として扱う方がいいかと。」
そういうと麗華はため息をつく。
「ハァ、問題山積みね。
昨日って結局、犬の怪物だけでも十数件あったんでしょ?」
「ええ、俺たちで二件、
その他禦の局員で三件
そして何者かがやったのが九件
そのうち刀傷から七件は俺が追っているお武家様で
二件は撲殺とナイフの傷から謎の二人組みといったところですね。」
そう説明すると、麗華は一枚の紙を甲子郎に渡した。
「それと一件追加してくれる?どうやら村雲の一人も
昨日一匹退治したようよ。」
「え?村雲の連中も遭遇したんですか?」
その言葉に少し驚きながら資料を見る甲子郎。
すると少し笑みを浮かべて麗華が答える。
「ええ、それは日本国内のことですし、
彼らの本部も近いのですもの、
日本政府直属の機関だって動くわ。
・・・君の仲良し君もね。」
すると甲子郎の顔が少し引きつる。
「げ・・・やったの早間かよ。よりによってアイツが・・・。」
その顔を見て呆れたような表情に変わる麗華。
「村雲は見方なんだから、間違っても喧嘩は辞めなさいよ。
それに早間君はまじめで良い子じゃない。」
「どこがですか・・・。」
「もう瀬戸君が行く先々で喧嘩するから、恥ずかしいったらないわ。」
「アレはあいつがいけないんですよ!」
「貴方たちのお陰で、よぶんな仕事をいくつもしたわ。
本当に意味の分からないところでつっかかり合うのだもの。」
そう言われると、甲子郎は返す言葉も無くたじろんでしまった。
「さて、冗談はさておき、今晩はどうするの?」
「ええ、今日も出歩いてみます。
琳は昨夜の死骸から呪術を解読するのに
大変でしょうから、一人で。」
「平気なの?」
「ええ、もともとは一人で周るつもりでしたしね。」
「でも、昨夜は今までと違って、数が多すぎたでしょ?
瀬戸君たち以外でもうちの局員が遭遇しているし、
今までと状況が変化しているようよ。
なんなら早間君とでも周ったら?」
「勘弁してください・・・。」
「・・・昔はあんなに仲良かったのに。」
「昔と今は状況が違うんですよ。」
麗華の言葉を受け流すと、
甲子郎は書類を持って部屋を後にした。




