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とある傭兵の放浪譚 ー流離の傭兵、寂しがり家な少女と共に世界を巡るー  作者: フルツ好き男
第二章 水の都と自由の風

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2-16. 【アーカイブ】とある鍛治士の匠録

出典:(本の体裁でないため題名なし)

著者 : レミアル・イソルド


初めまして、我が愛しき“息子”の担い手よ。


いま君の手にあるその剣は、この私、自他ともに認める空前絶後の天才鍛造師、レミアル・イソルドが鍛え上げたものだ。


私はこの子に、シルフォルビス――"世界を巡る風"、という名を与えた。君がこれからこの子と共に歩むのなら、少しばかり、この子の“癖”について教えておこうと思う。

 

▍ 全体の刀身構造について


【外殻:セレヴァイト鋼】

 刀身を覆う外装素材には、耐衝撃性と導圧性に優れた希少金属であるセレヴァイト鋼を用いている。コイツは外から受けるあらゆる衝撃を一点に溜めず、刀身全体へ“流す”ように拡散する特性を持つ。言うなれば、「風のように力を逃がす金属」だ。強靭でいて、且つしなやか。少し気難しいこの子の性格そのものだろう?


【中核:風導結晶(導芯)】

 そしてこの子の“心臓部”には、繊維状に加工した風導結晶ふうどうけっしょうを縦軸に沿って埋設してある。この結晶は外から加わった力――斬撃や打撃などのエネルギーを、回転流(私は“空渦くうか"と読んでいる)として蓄積し、保持する機能をもっている。

 つまり一撃を受けるたびに、この子の中には“風”が巻き起こり、眠れる息吹のように、渦を巻いて反撃の時を待っているのだ。……根に持つところは、私に似たのかな。


▍放出と制御機構について


風導孔ふうどうこう空渦くうかの排出機構)】

 刀身の先端・側面・柄の根本に、それぞれ微細な排出孔を仕込んである。通常時は閉口しているが、風導結晶ふうどうけっしょう空渦くうかを溜め込み共振状態に入ると、内部に蓄えた風圧を外へ放つ通路となるのだ。

 ちなみに、放出口は肉眼では見えないほど微細に設計してあるが、これは放出の出力と圧力を最大限に高めるためだ。うっかり覗き込まないように。目がいくつ有っても足りないぞ。

 とにもかくにも、この構造のおかげで、斬撃・突き・切り返し――いかなる動作においても、君はこの子から“風の後押し”の支援を得ることができる。一緒に戦ってくれる辺りが、健気でなんとも素敵だろう?


【共振解放トリガー】

 柄の鍔寄りに小型の機械錠式ボタンを仕込んである。これを押下することで、風導結晶ふうどうけっしょうは解放状態へと移行し、内部に蓄積した空渦くうかが排出可能となる。

 だが、放たれるのはただの風ではないぞ。君の柄の握りの強さや振りの速さ、剣筋の軌道――その全てを読み取ったうえで、この子はもっとも適した孔から、もっとも適した量と圧で、その“一撃”を後押ししてくれるのだ。……下手したら、持ち手の君よりも賢いかもね。


▍そのほかの注意点


1. 解放状態を長時間維持し続けると、風導結晶ふうどうけっしょうが過剰共振を起こして消耗を早めてしまう。こう見えて、とても繊細な子なんだ。あまり無理はさせないでやってほしい。

2. 先ほど述べたとおり、この子は衝撃を「受け止める」よりも「受け流す」のが得意だ。風のように躱し、流しきる剣筋で扱ってやってくれ。


▍最後に。


 剣は声を持たない。だから君が、この子の“声”になってあげてくれ。

 剣は意志を持たない。だから君が、どうかこの子の“意志”を示してあげてくれ。


 刃は、ただ振るわれるだけのものじゃない。

 誰の為に、何の為に、その一撃を振るうのか――その問いの答えを持つ者にこそ、この子は応えてくれるだろう。


 どうかこの子を、欲や怒りのままに振るわないでほしい。

 この子は、ただ傷つけるために生まれたのではない。

 

 私は信じている。

 この子がいつか、どこか遠くで苦しむ誰かのもとへ辿り着き、その誰かの閉ざされた道を――ほんの少しでもいい、拓いてくれることを。


 世界を変えるような偉業じゃなくていい。

 たった一人の命を救うこと。

 たった一滴の涙を止めること。

 そのために、風のように駆けていける剣であってくれたなら、私はもう、それだけでいい。


 それでは。愛しき“息子”と、その担い手よ。

 ――どうか、風のように自由な、良い旅路を。

 

天才鍛造師 レミアル・イソルドより

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