2-8. 【アーカイブ】風系統の魔術について
出典:「風系統術式の指南書」
著者 : レオニダス・ヴァレイン
(魔法都市リュミエールの書物棚から拝借。その一部を抜粋)
▍ 風翔術
風翔術は、術者自身を中心とする空間内の風流・気圧を制御する基礎的な風系統魔術である。
・周囲の空気を収束、解放することで、上昇気流や突風による推進力を得ることを目的とする。
・初級段階においては、微風を利用した跳躍補助や姿勢制御などに限られるが、熟練者の手においては、滞空、短距離飛翔、あるいは瞬間移動と見紛う高速機動も可能とされる。
・一方で、術行使中の姿勢制御や空間感覚の調整が不十分な場合、急激な加速や空中転倒を引き起こす危険性もあり、使用者の身体能力と空間認識力が大きく影響する繊細な術式である。
・狩猟、探索、食料調達、急峻地帯での移動補助など、実用性を重視した機動補助術として広く用いられている。
▍風刃
風刃は、空気を高密度に圧縮・加速させ、前方へ直線的に放出する切断系魔術の一種である。
・術式発動と同時に形成される風圧刃は、極めて細く、鋭利な層構造を維持しながら飛翔し、対象に対して切創、貫通、打撃といった複合的な物理干渉を加える。
・射出圧力および飛翔速度の制御は術者の集中力と空気操作精度に大きく依存しており、習熟度によって、至近距離での牽制から、遠距離への致傷攻撃に至るまで幅広く応用が可能となる。
・本術は単発運用を基本とするが、高度な修練を積んだ術者においては、術式の改良により、連射、扇状散射、曲射など、多彩な発展系を操る例も報告されている。中には、風を刃ではなく網や縄のように変化させる変形型すら存在する。
・元来は、リュミエール周辺の森林地帯における効率的な木材採取を目的として開発された術式。後にその切断精度の高さから戦闘用へも転用されており、その汎用性の高さから現在では多くの風魔術師の基礎訓練科目にも組み込まれている。
▍虚音界
虚音界は、対象の周囲および体内に存在する空気振動を意図的に操作、調整し、聴覚的情報の遮断・減衰を目的とする沈音系術式である。
・被術者の発する声、呼吸音、足音などの生体音を含む、全ての空気中の振動を大幅に抑制し、周囲の音響を感知しにくくする。
・高度な運用により、対象の聴覚機能を一時的に完全遮断することも理論上は可能であるが、長時間の適用は被術者の精神的ストレスや空間把握障害を引き起こす恐れがあるため、細心の注意が必要。
・本術は元来、住宅地区における騒音対策を目的として開発された術式だが、近年は窃盗などへの悪用が目立ち、対策術式の考案が急務となっている。




