そのこととなく夏は
夏、特に八月が苦手という方へ
ある相互様のエッセイを読んだ。
感想やレビューを書ける気がしない。
それはあまりに、私の心象風景の相似形だ。
だから少しだけ自分語り。
傷を舐めあうわけでもないが。
ああ、それもいいな。
だって猫とウサギだし。
八月に手放したものは多い。
家族やウサギも夏にさよならした。
恋だの愛だのは、八月の光に砕けた。
集めた漫画や昆虫も、川原の石も捨てられたね。
夏休みの想い出と一緒に。
八月に入手したものって何だ?
そうだ、夏用の喪服セット。
夏は逝く。
勝手に何処かに逝くのだ。
現実を置き去りに。人の想いを慮ることなく。
項垂れた向日葵は、夏の墓標だ。
――そのこととなく、物ぞかなしき
でも生きている。
まだ生きていける。
茹だった頭で明日の業務を組んでいる。
汗を拭って駄文を連ねる。
痛むのは心だけじゃない。
悲しい寂しいのは、きっと私だけじゃない。
作中一部載せた短歌は、伊勢物語四十五段から引用しました。