17話 夢か現か、それとも─
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─side 美波─
神殺しであることが露見して四日が経った。驚くほど何も起きていない。強いて言うなら沢山の傷を付けて帰ってきたアカネさんをレイさんが二回ほどしばいていたぐらいだ。
平和だ。平和は良いことだ。
けれど、何か違和感を感じる。何かを忘れているような、そんな違和感。
「美波ちゃん?大丈夫かい?」
『シロさん』が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「体調悪いのか?」
『レイさん』がお茶を差し出してくる。
「……眠剤とか入ってないよな?」
『愛さん』が湯呑みを覗き込む。
「いやいや、流石にそんなことしないでしょ?」
『アカネさん』がお茶を飲みながらそんなことを言う。
「この子はするわよ〜」
『唯さん』が据わった目を見せる。
いつも通り。いつも通り、の、はず、だ。
「……いや、大丈夫です。なんでもありません」
私はそう言って、机に向かった。
特にいつもと変わったことはない。いつもこんなやり取りをしている。
今日は何をしようか。巡回は『他の処刑人』がやっているし、処刑人としての依頼も、何でも屋としての依頼もない。本当に暇だ。
「……あれ…?」
暇?そんなはずはない。確かに仕事が少ない日はあるが、仕事が全くない日なんてなかった。私が十六夜に入る前も、仕事がない日はなかったと聞いている。
凄腕の処刑人がいる上に、報酬もそれに見合った金額だけを提示している。だからかなり信頼もされている。大なり小なり仕事が舞い込んでくるものだ。
「あの、仕事は…」
「ん?今日は何もしなくていいよ?特に仕事ないしね。こんなことは珍しくもないだろう?」
あっけらかんとそう言う『シロさん』に、どこか安心してしまう。
そう、かもしれないな。うん。考えすぎだ。神経質になっているのだろう。
とは言え、何をしようか。
「手合わせでもします?」
そう言うと、『アカネさん』と『唯さん』の目が爛々と輝き、すっ、と立ち上がる。
「隣に道場あるからいきましょうか〜!いろんなサイズの木刀があるわよ〜」
「レイもシロもやるわよね!?ね!?」
「いや俺はやらん」
「ボクたちは戦闘が不得意なんだから勘弁してよね…」
「えー!?」
そんな会話をしながら、結局全員で道場に向かった。
かなり広い木造の道場で、壁には様々な種類の木刀が立てかけてあった。『唯さん』は太刀を、『アカネさん』は短刀を取り、私も太刀を取った。
「そう言えば、美波ちゃんの体格なら打刀が合ってるはずだけど、どうして太刀なんだい?」
『シロさん』の言葉に、少し面食らう。
確かに、普通なら自分の体格に合った刀を選ぶべきだ。今使っている刀は太刀としては短い方だが、私の体格には合っていないだろう。
だが、この刀でなければいけないのだ。
「…これは、師匠の刀なんです。師匠が亡くなった時に渡されて、保管していたのですが、私が元々使っていた刀が折れてしまって。師匠にも『使え』と言われていましたし、それからずっとこの刀を使っています」
言うつもりはなかったのだが、まあ言っても問題はないだろう。
「へえ…」
「美波ー!最初に私とやりましょうよー!」
『アカネさん』は手を振りながら大声を出すが、距離が離れてるわけでもないのだから、そんなに主張しなくて良いのに。
ふと、大きく振られている『アカネさん』の手を見る。いつもの手袋は着けておらず、綺麗な手が顕わになっていた。
「………は?」
おかしい。アカネさんはいつも手袋をしている。どんな時でも頑として手袋を外さない。傷跡があると、言っていた。
爪も赤く、人間に擬態する時ですら、傷跡も赤色の爪も変えられないと。
『アカネさん』の手には傷なんてないし、爪も赤くない。一度爪だけ見せてもらったが、血のように真っ赤だったのを覚えている。
違和感。なんだ、この違和感は。私は何を忘れている?何故私はこんなに焦っている!?
思い出せ、思い出せ!ここ数日何があった!?十六夜は忙しい時の方が多いはずだ!
「美波ちゃん?どうしたの?」
心配そうに手を伸ばしてくる『シロさん』を突き飛ばす。
違う。こいつはシロさんじゃない。いつも通り?そんな訳がない。
木刀を捨て、刀を抜き、構える。
「答えろ。お前は誰だ」
私は何かを忘れている。
何か術が掛けられているのなら、シロさんとレイさんが気づく。
仕事が少ない時は、唯さんが何かしら厄介な依頼を持ってくる。それを喜んで引き受けるのがアカネさんで、唯さんに小言を言うのが愛さんだ。
何もしなくていい?この店は何かしなければ落ち着かないひとばかりだぞ。
いつだ?いつからこんな違和感を感じていた?どうして気づかなかった?わからない、わからない!
「……あーあ。まただめかあ。さすが美波」
『シロさん』の口から、聞き慣れない声が聞こえてくる。子どものような、あどえない声。
いや、聞いたことがある。どこで?私はこの声を飽きる程聞いていた。誰だ?誰だ!?
「ごめんね?怖がらせるつもりなんてないんだけど……うーん、やっぱり上手くいかないなあ」
「ま、いっか。美波、もう一回だよ」
ぐらり、と視界が周り、体から力が抜けていく。
…知っている。この感覚を、私は知っている。
「ごめんね。でも、これは必要なことなんだ」
その声を聞いた途端、また視界が暗転する。
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「あちゃー。まだだめかあ」
まって
◇◇◇◇◇◇◇
「ごめんね、美波。辛いだろうけど、もう一回だよ」
わたしのはなしをきいて
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「うーん、別の方向からアプローチしてみようか」
ねえ、あなたはもしかして
◇◇◇◇◇◇◇
「ようやく見つけたの。だからもうちょっと頑張って」
どうして あなたが
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「これが、唯一の最善策なんだよ」
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