前口上
妖怪。
それは人間の理解を超える奇怪で異常な存在。物語として語られる、架空の存在。
きっと、普通の人間ならば、誰もが『架空の存在』と思っていることだろう。
「愛ぁ〜。また失せ物探しが来たわよ〜」
店長、星川唯。
「またか……『妖怪』たちは何度物を失くせば気が済むんだ…」
副店長、紫白愛。
「そういえば、最近小競り合いが急増しているらしいぞ」
救護係、レイ。
「物騒だねぇ。ボクも気をつけなきゃ」
一般社員、シロ。
「気をつけていても巻き込まれると思いますがね。まあ、敵は全て斬るまでです」
新人社員、星川美波。
ここは人間が暮らす世界の裏。通称『裏界』
『裏界』にはヒトならざるモノと、ヒトならざるモノに招かれた人間が共存している。
ヒトならざるモノには、当然妖怪も含まれている。
『裏界』では妖怪なんて居て当たり前。『ありえない』こと自体が『ありえない』のだ。
妖怪は、神々が定めた『掟』によって縛られ、皆平等に、そして不平等に日々を過ごしている。
これは、ひとりの女性が現れたことにより巻き起こる物語。
ダレカの存在を、ダレカが肯定していくお話。
誰もがキズを負い、それを隠そうと、治そうと、認めてもらおうと、どこかで藻掻いている。
これは、そんな世界。くだらなくて、最低で、それでいて幸せな物語。