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ジイちゃんの遺言 その②

『よう、久しぶりじゃのう次郎。お前が中学生になってから会えておらんから14~15年ぶりかの。こんな映像で長話しもなんだから、簡潔に説明するからよぅく聞いてくれ。実はワシ、この世界、つまり地球の人間じゃないんじゃ。最近流行りの漫画なんかで言う所の異世界人って言えば分かり易いかの。で、そこで500年くらい前から大賢者と呼ばれとってな。あっちとこっちを繋ぐトンネルを創ってそれの管理をしとったんよ』



映像のジイちゃんは一旦言葉を区切って映像の中でお茶をすすり始めた。



『一体どこからツッコンで良いか分からないけど大概ボケてたのかジイちゃん!』



『おっと、余計なツッコミは不要じゃ。これは事実だ。何ならワシの秘書ちゃんに聞いてみい、もちろんほとんどの者は知らん事じゃが、ワシに近しいごく一部の者には周知の事実なんじゃ。でな、何でそんなトンネルが必要だったかというとワシが生まれた世界はこっちと違って魔法や錬金術で発達した世界でな、魔素という物質を使うことで生活というか世界が成り立っとるんじゃが何をするにも魔素を使うもんじゃからこっちでいう化石燃料みたいにいつ枯渇してもおかしくない状況になってな、350年ほど前の王様にどうにかならんかと相談を受けて色々研究、模索したんじゃが自然にあるものを復活させるのは無理だという結論になったんじゃ。それでどうしようとなった時にピーンときたのよワシ。「無いなら他から持ってくれば良いじゃん!」と。それで空間魔法やら時間魔法やら何やかやと試しておったら見つけたのがこの地球というわけじゃ』



一気に話して喉が渇いたのかまたお茶を一啜りしてから話を進める。



『それが今から250年ほど前でな、それから50年ほどかけて地球までのパスというかトンネルを繋げたんじゃ。今もそうじゃが当時から地球は魔素で溢れておってな、それでいて化学文明で発展してきたからなのか全く魔素を利用しておらんかったからそのトンネルを利用して魔素を送っておるんじゃ。おかげで向こうの魔素も安定しておる』



『その後はトンネルの管理の為にあっちとこっちを行き来する内にこっちの世界にも愛着が湧いてきたんで、100年ほど前にあっちの出入り口を隠ぺいして生活の拠点をこっちに移したんじゃが、こっちでの生活の為に商売を始めたらこれがあっという間に繁盛して今に至るんじゃ』



何とも眉唾物の話しである。いくらジイちゃんの話しでも信じられるハズもない。それに500年も生きてただなんて、話しの1番初めの部分からして揶揄われているとしか思えない。



「あのぅ、秘書さん、これっていくら何でも荒唐無稽すぎますよね。ジイちゃんが3D映像の自慢したいのと最期に俺を揶揄おうとしたって事で理解して良いですか?」



「いいえ、次郎様、健吉様が語られていることは全て真実です。ほら、まだ続きがありますよ」



『ま、ここまでがワシの過去から現在までのあらましじゃ。そしてここからがお前を呼んだ本題じゃ。次郎にはワシ亡き後、さっき言うたトンネルの管理をしてもらいたい。もちろん、あっちとこっと行き来して見分を広めるも良し、こちら側で管理だけしてもらっても構わん。一生食うに困らん報酬もグループから出す様に手配しとる。どうじゃ、引き受けてくれんか』



映像のジイちゃんが何故か急に改まって頭を下げる姿勢でこう言った。どうせフリーターだし、給料を貰えるなら吝かではないけど、たくさん居る身内の中でどうして分家の末端の俺なんだろう。そう思っているとジイちゃんの映像が再び動き出した。



『お前の事じゃから何故俺なのかって考え込んでるんじゃろ?理由は簡単!数多く居るワシの子・孫の中で魔力とスキルを有しておるのがお前だけだからなんじゃ、次郎。ワシはこっちに来てからワシの寿命が尽きる前に血の繋がったワシの身内に魔素トンネルの管理を任せたいと考えておったんじゃ、しかしあっちに作ってもこっちに作ってもスキルどころか魔力を持つ子すら産まれなんだ。死んだばぁさんにバレる度にとっちめられてのう』



そういや、ジイちゃんの若いころのあだ名は【下町の種馬】だったとか。ただの浮気じゃなくて、そのトンネルとやらを管理させる為に必要だったって事か。



『のう次郎、お前【異世界転生】モノの漫画とかアニメが好きらしいのう。ジイちゃん何でも知っとるよ。ワシのトンネルならいつでも帰ってこれるし向こうの金も持たせちゃるぞ。お前が子供の頃に絵本を見て言うとった馬車の行商人も出来るし。それにお前にはちゃんと向こうで生活できるように子供の頃に仕込んどるし』



ちょっと待て!【向こうで生活できるように仕込んどる】だって?いつ!どこで!!!!それに俺の秘かな志向を何故ジイちゃんが知ってるんだよ!そして何でこの映像はイチイチ俺の反応を確認するように止まったり動いたりしてんだ?



『色んな事を教えてやったろ?釣りとかちょっとした狩り。キャンプ全般。ナイフ1本で道具作ったりとか』



確かに…。色々教えてもらった。楽しい記憶ばかりだし、今の趣味にも繋がってるものもある。



『第一、ワシがお前に語りかけとる言葉を何語だと思っとる?地球のどの言語でもありゃあせん。あっちの世界の言葉じゃよ』



「え… え?あっっ!」



『ま、こんな映像ではあまり真実味が無いのも分かる。ここから先は俺の秘書ちゃんにきいてくれ。最後になったが次郎、お前に幸せな人生があらん事を祈っとる』



その言葉を最後にジイちゃんはスーっと消えてしまった。映像とはいえ、折角会えたのに忙しないジイちゃんだ。そんなことを考えていたら徐に秘書さんが話しかけてきた。



「次郎様、健吉様よりのご遺言は以上です。ここからは私がご説明させて頂きます。が、本当に信じてもらう為にもアタシも本来の姿で話すね~♪」



は?という間もなく、秘書さんの輪郭が歪みだし小さくなってしまった。そして俺の目の前に現れたのは羽が生えた小さな小さな妖精の様な生き物だった。


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