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ジイちゃんが死んだ。

ジイちゃんが死んだ。

そう聞かされた俺はただひたすら悲しんだ。


 俺を可愛がってくれたジイちゃん。

別荘の山小屋で色んな事を教えてくれたジイちゃん。



ヒマを見つけては格闘技の稽古をつけてくれたし、釣りや小動物の狩りの仕方を

教えてくれたのもジイちゃん。当時同級生と比べてかなり小柄で体力もなかったので学校の友達にはあまり相手にされなくて一人でいることが多かった俺を心配してか本当に色んなことを教えてもらったし遊んでもらった。



あまりにも俺が喜んだからか、釣り道具や簡単な罠は自作するとこから教えられたっけ。

もちろん、刃物の扱いや釣った魚や狩った獲物なんかの捌き方まで叩き込まれた。

「誰も相手にしてくれんかったから」と自作の謎の言語(暗号?)を無理やり

覚えさせられた事は俺の中ではかなり特殊な思い出だ。

だって途中から俺とジイちゃんはその自作の言語で会話していたんだから。

とにかく俺の中で中学生になるまでのジイちゃんとの思い出は特別だった。



葬儀の最中、そんな思い出話しを親父に話していたらおもむろに頭を叩かれた。


「次郎!お前まだそんな子供の頃の妄想を覚えてたのか?良~く考えてみろ!天下に冠たる甲斐田クループの総帥であるお爺さんにそんな暇があると思うか?もしあったとしてもだ!一族の中で分家も分家のしかも更に傍流の孫の一人をそんなに構うワケないだろう。」



「え?」



俺は親父の言葉の意味が暫く分からなかった。だけど確かに…。



ジイちゃんが一代で興した甲斐田グループは今や世界的な大企業でジイちゃん自身も世界中を飛び回っていたし、海外で雑誌の表紙になったりもしていた。



「あれ?」



俺ってばもしかしてとんでもない思い違いをしていた?確かにあんなに忙しくしていたジイちゃんが俺とずっと一緒に遊んだり出来る訳ない…よね。



「それになぁ次郎、俺たちが住んでいる町にお爺さんの別荘なんて無いし俺だってお爺さんと二人きりで会ったことなんて1度も無いんだぞ!分家の更に分家の子倅のお前が子供の頃にその話題を出す度に俺と母さんはどれだけ恥ずかしかったか!お前ももう良い大人なんだからそこんとこ考えてくれよ!ったく」



「う…うん…」



 ってことは全部俺の記憶違い?子供の頃に誰にも見えない友達の話をするっていうイマジナリーフレンドならぬイマジナリージイちゃんだったって事?それが本当なら俺ってばかなりイタい子供じゃん!



 でも、釣りやちょっとした狩りの知識や経験は間違いなくある。わな猟の免許も持っている。(今の趣味の一つでもある)



格闘技もある程度は身につけてる。道場に通ったことなんてもちろん無い。そんな楽しい思い出は全てジイちゃんと繋がっているのにそれ自体が有り得ない事だと言われても…。



 親父から叱られた後、葬儀の間中昔の事を考えていたけど、考えがまとまらず葬儀が終わる頃には考えることを放棄していた。



 主要な身内やグループの重鎮が焼香を終え、俺たちの様な分家にも焼香の順番が回ってきた。



 棺の中のジイちゃんは俺の子供の頃の記憶そのままの姿だった。



「ジイちゃん…」



 記憶違いだろうと何だろうとやっぱりジイちゃんはジイちゃんだ。俺は溢れる涙を堪え切れずに周囲の目も憚らずに泣いた。ひとしきり泣いて落ち着いたころ、見知らぬ女性に声をかけられた。



「甲斐田 次郎様でいらっしゃいますね」



「は、はい」



 見知らぬ女性は俺の返事にかぶせる勢いで俺にこう告げた。



「お爺様であらせられます甲斐田 健吉様より次郎様に相続の金品についてお伝えすることがございます」



「相続?俺に…ですか?」



この相続が俺の人生を変える事になるとはこの時点では思いもしなかった。


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