九 6 ーー 疼く ーー (6)
消灯時間をすぎると、病棟内の明かりが一段と暗くなり、薄気味悪さが際立っていた。
若菜は重い体を動かし、病室の扉を開き、通路を見渡した。
通路を歩く患者や看護師の姿はなく、静寂と重苦しい空気が充満していた。
若菜は通路に出ると、静かに扉を閉め、足音を殺しながらゆっくりと歩を進めた。
ずっとうつむいたままで、少し進んだところで唐突に足を止め、顔を上げた。
逆らえない……。
胸の奥に潜む怒りと憎しみに抗いたくても、逆らえなかった。
止まったのは二部屋離れた病室。
そこの名札は無名となった空室。
辺りを気にしつつ扉を開き、なかに入った。
病室は電気も消されており、扉を閉めるとより暗さが充満さしていった。
「ーーようっ。ちゃんと来たみたいだな」
身の毛のよだつ低い声が若菜の肌に張りつき、否応なしに顔を上げた。
逆らうことすらできず、さらに背筋が凍りついてしまう。
整頓されたベッドで横たわっていた柳田優に。
昼間の脅迫に従うしかなく、若菜はここの病室に訪れていた。
優もいつしか病室に忍び込んでいたらしい。
若菜が病室に現れたのを知ると、体を起こして胡座を組む。
右手で頬杖を突くと、若菜を舐めるように上から下に視線を動かす。
陰湿な眼差しに若菜は身を守ろうと、咄嗟に胸の前で腕を抱き締めた。
すると、優は黙ったまま右手で手招きする。
逆らえない威圧感に、若菜は歩を進めたが、反抗心が働き、病室の中央付近で止まった。
逃げたくて顔を背けると、大袈裟に舌打ちされ、さらに若菜の体が強張る。
「ーー脱げよ」
ーーっ。
息が苦しくなる。
恐喝的な命令にを若菜に浴びせる。
若菜は唇を噛み、無言の抵抗に徹した。
「脱げって言ってんだろっ」
抵抗していると、優は一蹴する。
優の声は、鋭い刃物で刺されているみたいで、震えが止まらない。
逆らえない恐怖から、若菜は自身のパジャマのボタンに触れる。
ピンク生地に白いドット柄のパジャマのボタンがゆっくりと若菜の手で開けられていく。
ボタンがすべて外されると、肩からパジャマをめくる。
カサッと柔らかい音とともに上着が床に落とされた。
細身で色白の肌、胸元に薄い黄色の下着が露わになった。
優の陰湿で狡猾な笑みが暗闇に浮かんだ。




