九 5 ーー 疼く ーー (5)
何度も二人に連絡を入れたのだが、一向に捕まらない。
このままではラチが明かず、家に行ってみることも頭によぎったけど、スマホで繋がらないのであれば、会うこともできないのでは、と悶々とした時間をすごしていた。
午後九時をすぎ、落ち着かない優弥のスマホが鳴る。
愛梨からであった。
「ねぇ、どういうことなのっ、ユウッ」
開口一番、優弥を一蹴するような口調で愛梨は声を荒げた。
「何もわかんないんだよ。今日、僕は学校を休んでいたし、ほかの奴からもあいつらが暴行事件起こしたとしか聞けてないんだ」
「……そんな」
荒れる愛梨を諭そうと、ゆっくり話し、気持ちを落ち着かせていく。
「愛梨、お前は何か知ってるか?」
優弥にとって、何も知らず、微かな情報だけでもとすがってしまう。
すると、愛梨はしばらく思案してから、
「私もバイトに行っていたから詳しくは…… でも、英人らの学校に行ってる友達から連絡があって。そしたら、動画も流れてるらしいの」
どこかでまだ信じたくはなかった。
それなのに、愛梨の話を聞いていると、現実なんだと心臓を鷲掴みにされて痛感させられる。
「信じたくなかったけれど、本当にあの二人だった……」
すでに愛梨は動画を見ていたらしく、二人の姿にショックを受けたのか、声が震えていた。
「それで、英人とか変なことを言っていたのよ」
「変なことって?」
「うん。なんかね、誰かを苦しめるなとか、いつまで苦しめるんだって。そしたら、相手の子が「人形」とかって。ちょっと聞きづらかったんだけど」
耳に当てていたスマホを握る手に、力がこもってしまう。
つい奥歯を噛み締めた。
「人形って…… まさか……」
「……? ユウ、何か知っているの?」
「あ、いや……」
確証なんてものはない。
だからこそ、愛梨には濁しておいた。
それでも、黙ってしまうことで何か悟らせたかもしれないが。
状況がより掴めず、混乱しそうになっていると、
「そういえば、英人が手を出す前に、「ヤナギタ」って名前が聞こえたの。それを聞いて、二人は殴りだしたって。なんだっけ、確か……」
「柳田優っ」
「あ、そうそう。あれ? ユウも知ってる人なの?」
つい語尾が強くなる。
愛梨の声が次第に聞こえなくなっていた。
聴覚が鈍るにつれ、胸の内が激しく脈打っていく。
全身を駆け巡る血が湧き上がっていた。
柳田優っ。




