表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨に疼く  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/74

 九  1  ーー 疼く ーー  (1)

           

            9



 病室の窓から外を眺めていると、空は雲一つない快晴。

 午後から一時的に雨が降ると言っていたが、噓みたいな清々しさに、若菜は心は穏やかになった。

 よく考えれば、自分から空を見上げるのも久しぶりだった。

 不思議と体が軽くなっていた。

 若菜は棚に手を伸ばし、メガネを取ってかけてみた。

 メガネをかけるのも久しぶり。

 入院当初、習慣からかけようとしたけれど、頭痛が酷くなって止めていた。

 痛みに耐えてメガネをすれば、谷口優弥に酷く当たらなかっただろうか、と昨日から考えてしまう。

 ふと視線を移せば、メガネのそばにあったピンクのペンを取り、クルクルと回してみた。


 “戒め”として貰ったペン。


 入院して心が乱れ、優弥に対しての態度を後悔してしまう。

 でも贖罪の念から話したわけではなかった。


 ペンを眺めてしまう。


 英人と涼介からの助言もある。

 でも、自分から優弥に話したいと考えたのだから、伝えたのだ。

 後悔はないと断言できる。

 自分の辱めを伝えたのに、気持ちは晴れていた。

 美桜にも言っていなかったのに。


「美桜にもちゃんと謝らないと……」


 晴れやかな気持ちで言い聞かせていたとき、不意に病室の扉がノックされた。

 そばにあった時計を見ると、まだ午前十時前。

 学校に行っているはずの優弥や美桜の可能性はなかった。


 ほかに思い当たる人物はいない。


 はめ殺しの扉の磨りガラスに人影が映っていた。

 体格から、看護師の浜崎でもないのも伝わってくる。

 不審に思いつつもペンを棚に戻して短く返事した。

 優弥なら、「入るよ」と断りを入れたが、それはなく、無言のまま扉が開かれた。


「ーーよう」


 全身の骨にまで染み込むような冷徹な声。


 若菜は驚愕から全身が凍った。


 足音を殺すように入ってきたのは、柳田優。


「……なんで…… なんであんたが」

「なんだよ、元カレが見舞いに来てやったのに、なんだよその言い草は」


 ジーンズに青いシャツを着た優。

 不適に口角を吊り上げ、扉をゆっくりと閉めた。

 密閉された空間になった瞬間、おぞましい優の雰囲気に体が縛られていく。

 一歩若菜に近づいた優に、咄嗟に若菜はナースコールのボタンに指を触れた。


 負けてられない……。


「来ないでっ。来たら人を呼ぶわよっ」


 身を丸め、子猫が威嚇するように怒鳴った。


 微動だにしない優。


 腕を組むと、また不適に狡猾な笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ