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雨に疼く  作者: ひろゆき


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 七  2  ーー 英人に涼介 ーー  (2)


 誇らしげに涼介は断言した。

 すると、ふざけていた英人も背を正して立ち、頬を緩めて頷くと、涼介に同調した。

 腰に手を当て、自信ありげな英人に、若菜は戸惑って顔を伏せてしまう。

 二人の揺るぎない姿に。


「……どうしてそこまで、信用するの?」

「まぁ、僕ら中学からの付き合いだしな」


 若菜の率直な問いに、顎を擦りながら涼介は答えた。


「だからって」


 そこで若菜は声をこもらせ、顔を上げた。

 脅えた眼差しに潜んだ揺るがない力に、涼介と英人は顔を合わせた。

 若菜は怒っているよりも、迷っているように見えた。

 一歩も引き下がろうとしない若菜に、英人は一度静かに息を吐いた。


「僕らが中学のときさ、クラスでイジメがあったんだ」


 若菜の問いには直球に答えず、唐突に話し出した。

 昔を思い出すように腕を組み、宙を見上げた。

 その横で、涼介は壁に凭れた。


「イジめていたのは山根って救いようのないクズだった。ワガママが人の皮を被っているような。そいつと連んでいる奴も、渋々付き合ってる感じだった。んで、イジメの標的にされていたのが川瀬って奴。こいつは普段から目立たない大人しい奴だったんだ」

「じゃぁ、その子を谷口くんが助けたの?」

「いや。誰も助けなかった。優弥だけじゃない。僕らも含めてね。情けないけど、関わりたくなかったんだ。そこで、川瀬を助ければ、クズの標的にされかねないって、知っていたから」


 若菜の疑問に、今度は涼介が答えた。


「でも、ある日、山根が死んだんだ」

「死んだって…… まさか」

「いや、そんな物騒なことじゃないから安心して。ただの事故だったから。家族で乗っていた車がスピードの出しすぎで、カーブを曲がり切れずってやつで。

 んで、その後、葬式があってクラスメートだった僕らは当然、参列した。けど、みんな上目だけの形で出ていたんだ。本音を言えば「自業自得」だね。そいつがいなくなって、清々したんだ。これでみんな解放されたって」


 二人の顔に、昔を懐かしむ様子や、哀れむこともなかった。

 淡々と喋る姿に、山根という人物像を若菜は想像してしまう。


「ーーで、イジメも自然となくなり、山根の空席だけが教室にポツリと残ったんだ。誰にも気にかけなかったんだ。あたかも、最初から山根って奴がいなかったみたいに、ね」

「そしたら、優弥の奴が突然、山根の席に花瓶と花を添えたんだ」

「ーー花?」

「ーーそ。ほら、ドラマとかによく見るだろ。死んだ人の席に花瓶を乗せるやつ」


 涼介の説明に想像ができたのか、若菜は頷く。


「誰もが無視していたんだ。それこそ、それまで連んでいた奴らも。でも、優弥は違った。山根を弔おうとしたんだ。

 けど、当然だけどイジめられていた川瀬は気に入らなかった。その花瓶を床に投げ捨てて、優弥に怒鳴ったんだ。「こんなこと必要ないっ。こいつは死んで当然なんだ」って」


 一気に捲し立てた英人は一度息を吐き、話を止める。

 先が気になるのか、若菜は食い入るように英人を見ていた。

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