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雨に疼く  作者: ひろゆき


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 七  1  ーー 英人に涼介 ーー  (1)


「悪いことをしてしまったな」

「まぁ、いきなりあんなことになってしまったからな」


 週明けの月曜日。


 涼介は英人とともに、再び病院に訪れていた。

 目的としては、若菜のことが気がかりになっていたことや、先日のことをちゃんと謝りたかったから。


 優弥には病院に来ることを言っていない。

 もちろん、先日に起きたことも。


 最近の様子から、何かに悩んでいるのは一目瞭然であり、これ以上は悩みを増やすわけにはいかないと考えて。


「今日はちゃんとノックしろよ」

「わかってるよ」


 病室の前に辿り着くと、英人に注意を促した。

 英人は呆れて頷き、今日はちゃんとノックした。

 はい、と短い返事があり、扉を開くと、今日は落ち着いているのか、ベッドに腰かけ、何かの雑誌を読んでいた。

 よっ、とまだなかには入らず、扉付近で挨拶すると、英人も顔を覗かせ、「やっ」と手を上げて挨拶し、己の存在を示した。


「入ってもいいかな?」


 先日のことがあり、二人は入ることを躊躇し、一度断りを入れると、一瞬若菜も戸惑い、唇を噛んだあと、「いいよ」と小さく頷いた。


「お邪魔します」


 それを聞いてずかずかと遠慮なく進む英人に呆れ、かぶりを振りながら涼介も後に続いた。

 ふと扉は開けておくことにした。


「この前は悪かったな。騒ぎになってしまって」

「ううん」

「その、大丈夫?」


 涼介が心配して声をかけると、「うん」と力なく若菜は頷いた。


「……その、あれから……」


 顔を上げた若菜は交互に顔を見ながら目を泳がせ、言葉を詰まらせる。

 大概の想像はつく。


「あぁ、あれならもう大丈夫。心配はまったくないよ」

 

 きっと野阪のことを気にしていると察したが、名前を発するのも億劫なのかな、と。

 そこで英人は英人はケラケラと笑って大袈裟に手を振って否定した。

 明るく振る舞い、あたかも何もなかったと。


「ごめんね。せっかく花を持って来てくれたのに」

「だから、気にするなって」


 それでも気に病む若菜に、涼介も笑った。


「そうそう。僕らはただ優弥のことを茶化しに来てただけなんだから」

「ーーえっ?」


 思わず本音を出す英人に、すかさず頭を叩いた。

 二人のやり取りに呆気に取られた若菜は呆然と瞬きをしていた。


「……別に谷口くんとは……」

「ーー嫌いか?」


 戸惑う若菜に遠慮なく聞く英人。

 また釘を刺す涼介であるが、エンジンがかかった英人はより前のめりになっていた。

 英人の首元を掴み、子供を制するように引っ張ろうとすると、ベッドの脇のテーブルに置かれたピンクのペンを見つけた。

 それは以前、優弥が真剣に悩んで買っていた物であった。


 やっぱり、藤村のためだったんだな、と涼介は嬉しくなった。


「あいつは大丈夫だよ」


 執拗に茶化そうとする英人の横で、涼介は呟いた。

 すると、英人の問いに困ってオドオドしていた若菜はふと動きを止め、首を傾げた。


「あいつは悪い奴じゃない」

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