六 11 ーー 拒絶 ーー (11)
視線を真上に向けたまま呟く名前に、二人は眉をひそめる。
「……ヤナギタ…… マサル?」
聞き覚えのない名前に途方になり、立ち上がると、涼介も腕を組み、首を傾げる。
「ーー誰だ、そいつは?」
寝そべる野阪に聞くが、挑発からか嘲笑う。
「答える気はないってか……」
「女がほし…… ければ、紹介し…… てやってもいい…… ぞ」
口内を切ったのか、唾を溜めながらの声が癇に障ってしまう。
「どう…… だ、お前ーー」
もう聞きたくなかった。
体が勝手に動いてしまい、野阪の口元を踏みつけた。
声を出させまいと、強く踏みつけた。
痛みと息苦しさに、野坂は英人の足首を掴み退かそうとするが、余計に力を込めて踏み込んだ。
「もう喋るな」
蔑んだ眼差しを注ぐと、隣で涼介が吐き捨てた。
「もういい。喋りたくないんならな」
ようやく足を退けた。
「なら、選択させてやるよ」
ポツリと呟く英人。
怪訝に野坂は二人に交互に視線を動かした。
「簡単だよ。この屋上から飛び降りるか、それとも僕らに殴り殺されるか。さ、選べ」
野阪の目が剥く。
「ふ…… ふざ…… け」
戸惑いをぶつける野阪を睨み返し、黙らせる。
「そんな…… ことして、お前らどうなーー」
「僕らがどうなるか? まぁ、この状況を見れば、完全に僕らは悪者だもんな」
脅えながらも必死に口を開く野阪。
だが、それを英人が割り込み代弁すると、野阪は当然だ、と強気で唇を噛んだ。
立場が逆転できると口角を上げようとした瞬間、再び口元をめがけて右足を振り落とした。
「だから、なんだ?」
「何度言わせればいい。お前の意見なんて聞いてないんだよ」
今度は容赦なく踏み続け、野阪の息が漏れていく。
「もう二度と俺らの前に出てくるな」
野阪を捉えると、全身が凍りついていく。
「言っている意味がわかるよな。お前みたいなゴミでも、二度と俺らの前に出てくるな」
それまで見えていた空が、二人の影に遮られ、暗闇が広がっていった。
「さぁ、選べ」
影に覆われるなか、残酷な問いが野阪の心を裂いた。




