六 8 ーー 拒絶 ーー (8)
前日、悩みは吹き飛んだのだと安心したのだけど、今朝の優弥の様子に、それはすべて打ち砕かれた。
今朝から貝のように頑なに口を閉ざし、釈然としない優弥に、英人に涼介は声をかけるのも躊躇してしまう。
もし、藤村若菜との間に何かがあったのなら、焚きつけた自分らにも責任があるな、と涼介と話していた。
くだらないケンカなら放っておこうと、考えていたけれど、気がかりなのも払拭できず、二人で相談して若菜の病院に来ていた。
心配させられない、と二人して用事がある、と優弥には黙っておいた。
何かしらの誤解を生じたのならば、助け船を出してやろうと目論み、ただの杞憂であるならば、二人を茶化してやろうと英人は息巻いていた。
反面、涼介は真面目に若菜の見舞いを考慮していたらしく、病院に来る前に、近くの生花店で花を取り繕ってもらった。
普段、面倒がるくせに、こういう配慮しているには感心してしまった。
やっぱ、こいつすげぇ。
「そういえば、僕らも始めてだったよな。見舞いに来るのって」
「まぁな。香川にしつこく聞いたのも、優弥に行かせるためだったし」
「僕らのほかにクラスで来た奴っているのかな?」
「さぁ? どうだろう」
病棟の廊下を歩きながら、ふと疑問をこぼした。
実のところ、学校であまり若菜の話題は出ていなかったのである。
なぜだろうか。
少し笑えなくなり、頭を掻いてしまった。
暗く接するわけにはいかないな、と頭を掻いていた手を止めると、病室に着いた。
「藤村さん、増田と高梨だけど、入るな」
「ちょっ、ノックぐらいしろってっ」
病室の扉に手を添え、なんの躊躇せず開く英人。
慌てて制止して腕を掴む涼介だが、すでに遅く、扉は無惨に開かれた。
「ったくっ。着替えでもしていたらどうするんだよっ」
礼儀のない英人を一蹴し、頭を叩く涼介。
衝撃に視界が揺れるなかでも、つい笑ってしまう。
笑い声がこぼれそうななか、英人の意識は病室の奥に注がれる。
若菜はベッドに横たわっていた。
そして、若菜に乗りかかって押さえ込み、一人の男がベッドの上で馬乗りになっていた。
若菜は手で口元を押さえられ、抵抗しようにも羽交い締めにされている。
髪の毛を大きく乱しながらも、横目で英人らを捉えた。
「お前っ、何やってんだっ」
刹那、涼介は踏み込む。
勢いのままベッドに駆け寄り、男の首元を掴むと、若菜から剥がそうと後ろに引っ張った。
それでも男は手を振り払おうと抵抗して、ベッドの上に留まろうと力を込め、より前のめりになる。
「お前、野坂?」




