三 6 ーー 危うい声 ーー (6)
無駄に瞬きをしてしまう。ってか、止まらない。
止まらない……。
ーーなんで?
突拍子のない問いが、鼓膜を通り抜け、動きが止まる。
視界が霞みそうだ。
ラックに戻したスニーカーの隣のスニーカーを手にした英人が優弥を見ないまま聞いてくる。
ゆっくりと視線を動かしても、英人はこちらを気にせず、白いスニーカーを眺めていた。
こちらを見ず、平然とする英人の隣に、無邪気にピースサインをして目を細める愛梨の姿が重なった。
どれだけふざけていても、僕にしては憎らしい。
「別に。最近、ちょっと話すことがあるだけだよ」
「ふ~ん。そうか」
突然のことで、動揺はしてしまったけれど、ごまかしておいた。
「でも、意外だったな。お前が藤村さんとは」
「だから違うっての。お前こそ、愛梨の話を真に受けるなって」
たまたま、あのときは若菜と遭遇し、そこを愛梨が居合わせた。
それだけだよ。
と、念を押した。
何より若菜の万引きのことは伏せておく。
「そっか?」
一度安心したのは間違いだったらしい。
英人は不敵に笑みを浮かべ、挑発するように口角を上げる。
「あの子に何かあげたい物でもあんのか?」
「ーーん? なんで?」
「だって、さっきからずっと向かいの店を見てたからさ」
何気ない英人の疑問にドキッとしてしまう。
悔しいけれど、図星である。
さっきから、通路際に並べられていた商品が目に止まっていたから。
「見てきなよ。多分、涼介は長くなりそうだし。あいつ、普段は面倒がっても、自分の興味があることには時間をかける奴だからな」
自分的には意識なんてしていなかったけれど、英人には見抜かれていた。
どうも、背中を押された感覚で、衝動が強くなると、「悪い」と片手で手刀を切って向かいの店へと向かった。




