三 3 ーー 危うい声 ーー (3)
考えることはなかった。
ただ、ひたすら走るしかない。
走るだけ。
何も考えずに。
呼び出されたのは、高校からはかなり離れていた。
普段は足を踏み入れることはない地域であったので、あまり詳しくはない。
不安から足が重くなりそうななか、それでも止まることはなかった。
優弥の学校へ通う生徒は、広範囲の地域からの者が多い。
若菜がこの近くを示したのは、彼女がこの近くに詳しいのだろうか、と考えながら、コンビニへと向かった。
もう少しでコンビニだ、と考え歩道を走っていると、そばに小学校があった。
ただ、小学校は数年前に廃校になっているのか、正門の前を通ったとき、鉄製の門は固く閉められており、校舎から子供の声が洩れておらず、寂れていた。
どこかこの土地事態が別空間から飛び出ているような、異質な雰囲気を出している。
自分が通っていた小学校も、廃校になれば、こんな寂れた様子になるのかな、と横目で眺めつつ、この先のコンビニへと向かった。
「ーー藤村っ」
また先に声が出てしまう。
声の後を追って小走りになり、コンビニの前に立ち竦む若菜に声が飛んだ。
スマホをいじっていた若菜。
優弥の声に顔を上げ、こちらに向くと、優弥は胸を締めつけられた。
若菜はやけに憔悴して見えたから。
「……大丈夫か?」
そばに駆け寄り、それまでは怒鳴ってやろうか、と考えていたのだけれど、若菜の顔を直面すると、すべてが飛んでしまった。
頭が真っ白ななか、平凡な言葉になってしまう。
「へぇ。ちゃんと来るんだ。まだ学校もあるのに……」
優弥の心配をよそに、若菜はクスッとおどけ、目を細めた。
連絡をくれたときの声とは裏腹に。
「お前が来いって言ったんだろうが」
嫌味を放てる元気さに安堵するが、よく見れば若菜は制服姿であった。
どうも怪訝に思えてしまった。
今日、若菜は学校を休んでいた。
それなのに、六月に入り、衣替えとなった白いシャツに、赤いネクタイの姿で若菜はいた。
「お前、なんだよその格好。学校休んでいたのに」
若菜の制服姿に疑念を口に出ていた。
「うん。さぼり」
嫌味を込めて放ったつもりでいたのだけど、打ちのめすことはない。
前髪を撫で、さらりと受け流されてしまった。
それも、必死になっている優弥が間違っているような雰囲気で。
どうも、明るさを取り戻しているみたいだ。
呆れて腰に手を当てると、うなだれてしまう。
必死になってここまで来たのが無様になってしまい。




