二 1 ーー 呼び出され ーー (1)
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優弥を急かすのは、誰でもなく優弥であった。
英人と涼介。三人でゲーセンに行き、遊んでいた最中である。
突如スマホが鳴り、優弥はすぐに店を飛び出していたのである。
向かったのは、学校近くにある商店街にあるコンビニ。
日が暮れるなか、夕食の支度に買い物を急ぐ人通りが多いなか、人を縫うように向かっていた。
半ば冗談だと思っていた。
その場しのぎに出た噓だと、信じていない気持ちも少なからずあった。
ーー ……今から盗むつもりだけど、どうする?
今でも鼓膜に若菜のか細い声が響いて残っている。
だからかそ、無視なんかできない。
英人と涼介についた噓は強引だっただろうと情けなくなる。
でも、余裕もなかった。
どんな噓をついていたかすら、覚えていないのだから。
明日、学校に行けば、嫌味をぶつけられるのは覚悟をしている。
それでも、若菜から連絡があり、いても立ってもいられなかった。
国道沿いをずっと走っていたせいか、角を曲がったところで歩き出した。
歩きながら大きく肩を揺らして息を整える。
額がすでに汗が滲んでいる。
汗を拭って髪を撫で、気持ちを整えた。
ちょっとでも、平静であるのを装うために。
内心では、心臓が爆発しそうに胸を激しく叩いている。
喉が水分を欲しているけれど、それでも見栄は張りたい。
角を曲がると坂となっており、そこを降りた先が商店街の入り口の通路となっている。
コンビニは、入り口の手前の左側にあった。
軒先を視界が捉えたとき、激しいはずの息が急に鎮まる。
ガラス張りの壁に凭れ、スマホをいじる一人の女の子の姿を見つけて。
女の子が若菜であると気づき、自然と小走りになってしまう。
「藤村っ」
まだ数メートル離れているにもかかわらず、声をかけてしまう。
焦りが止められず、つい声を張ってしまった。
名前を呼ばれ、顔を上げる若菜。
優弥に気づいた直後、驚いた様子に見えたけれど、すぐに苦笑した。
店前に辿り着き、一度大きく肩を揺らした。
「あんた、本当にバカみたいね」
「それはお前だろ。バカかっ」
息を整えるのもままならならず、激しい口調になってしまった。
本当なら、もっと怒鳴りたかった。
必死に堪えていたのだけど、そんな優弥を楽しむみたいに、優弥は目を細めた。
「残念。遅かったわね」
「当たり前だろ。ここまで戻って来たんだから」
「ーーそ。それは大変だったね。ま、はい」
人の苦労を楽し不敵に笑う若菜。
意味のわからない敗北感に襲われ、うなだれてしまう。
唖然としていると、不意に顔の前にペットボトルのお茶を一本差し出された。
喉の渇きが限界に近づいていた衝動から、反射的に「ありがと」と受け取ってしまう。
水分を渇望して、キャップを開こうとしたとき、ようやく手が止まった。
「お前、これ?」
嫌な予感が全身を駆け巡った。




