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雨に疼く  作者: ひろゆき


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13/74

 二  1  ーー 呼び出され ーー  (1)

           2




 優弥を急かすのは、誰でもなく優弥であった。


 英人と涼介。三人でゲーセンに行き、遊んでいた最中である。

 突如スマホが鳴り、優弥はすぐに店を飛び出していたのである。

 向かったのは、学校近くにある商店街にあるコンビニ。




 日が暮れるなか、夕食の支度に買い物を急ぐ人通りが多いなか、人を縫うように向かっていた。


 半ば冗談だと思っていた。 


 その場しのぎに出た噓だと、信じていない気持ちも少なからずあった。


 ーー ……今から盗むつもりだけど、どうする?


 今でも鼓膜に若菜のか細い声が響いて残っている。

 だからかそ、無視なんかできない。


 英人と涼介についた噓は強引だっただろうと情けなくなる。

 でも、余裕もなかった。


 どんな噓をついていたかすら、覚えていないのだから。

 明日、学校に行けば、嫌味をぶつけられるのは覚悟をしている。

 それでも、若菜から連絡があり、いても立ってもいられなかった。

 国道沿いをずっと走っていたせいか、角を曲がったところで歩き出した。

 歩きながら大きく肩を揺らして息を整える。

 額がすでに汗が滲んでいる。

 汗を拭って髪を撫で、気持ちを整えた。

 ちょっとでも、平静であるのを装うために。

 内心では、心臓が爆発しそうに胸を激しく叩いている。

 喉が水分を欲しているけれど、それでも見栄は張りたい。

 角を曲がると坂となっており、そこを降りた先が商店街の入り口の通路となっている。

 コンビニは、入り口の手前の左側にあった。

 軒先を視界が捉えたとき、激しいはずの息が急に鎮まる。

 ガラス張りの壁に凭れ、スマホをいじる一人の女の子の姿を見つけて。

 女の子が若菜であると気づき、自然と小走りになってしまう。


「藤村っ」


 まだ数メートル離れているにもかかわらず、声をかけてしまう。

 焦りが止められず、つい声を張ってしまった。

 名前を呼ばれ、顔を上げる若菜。

 優弥に気づいた直後、驚いた様子に見えたけれど、すぐに苦笑した。

 店前に辿り着き、一度大きく肩を揺らした。


「あんた、本当にバカみたいね」

「それはお前だろ。バカかっ」


 息を整えるのもままならならず、激しい口調になってしまった。

 本当なら、もっと怒鳴りたかった。

 必死に堪えていたのだけど、そんな優弥を楽しむみたいに、優弥は目を細めた。


「残念。遅かったわね」

「当たり前だろ。ここまで戻って来たんだから」

「ーーそ。それは大変だったね。ま、はい」


 人の苦労を楽し不敵に笑う若菜。

 意味のわからない敗北感に襲われ、うなだれてしまう。

 唖然としていると、不意に顔の前にペットボトルのお茶を一本差し出された。

 喉の渇きが限界に近づいていた衝動から、反射的に「ありがと」と受け取ってしまう。

 水分を渇望して、キャップを開こうとしたとき、ようやく手が止まった。


「お前、これ?」


 嫌な予感が全身を駆け巡った。

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