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王妹よ、いばらの冠を抱け〜この初恋、諦めなくていいですか?〜  作者: 俤やえの
番 外 編 アイのかたち【 全15話 】
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(7)書簡〈4〉宰相大公 レオポルト

( 7 )書簡〈 4 〉宰相大公 レオポルト


 エリザベート陛下、そして弟よ。


 二人の物語の結末は、収まるべくところに収まっただろうか? 

 おめでとう。これからは助け合って善き夫婦となって欲しい。


 その上で、皇帝がそちらで羽目を外さないようしっかり監督してほしい。私からも注意したんだが、毎日叱ってるせいか響かないようだ。よろしく頼む。


 …………妻に「皇帝観察日記じゃないのよ」と叱られてしまった。確かにその通りだ。すまない。

 

 私は、マックスが初めて立った時の話を書こうと思う。


 マックスは赤子の頃から大人しくて、クリス姉上の腕の中でいつも眠っていた。他の弟達がやんちゃで手がかかるのに比べ、とても良い子だった。


 私はフェルディナントに毎日振り回されていたから、弟という生き物に対して懐疑的だった。


 マックスはあやせば笑うし、膝に乗せれば手を叩いて喜ぶ。弟の可愛いさに感動したのはマックスが最初で最後だ。


 マックスは這い這いが遅かった。おしゃべりもあまりしないので、私は父上に相談したことがある。


 父上は朗らかに笑って「マックスにはマックスのペースがあるんだよ。お前もそのうちわかるさ」と言ってくれた。父上のおっしゃる通り、私は自分の子を持つようになってからやっと理解できた。子どもの育ち方は千差万別なのだな。


 あれは、マックスの三歳の誕生日。父上はマックスの身丈よりも大きな南瓜を持ち帰った。暖炉の前にごろんと転ぶ南瓜を、マックスは目をまんまるにして見つめていた。


 父上が「お土産だよ。こちらにおいで」と呼ぶと、マックスはクリス姉上の膝から滑り降りるようにして絨毯に尻餅をついた。そして、猛然と這い這いをしたかと思うと、南瓜をむんずと掴んで立ち上がったのだ。


 その様子を見ていた兄上とフェルディナントが「ブラーボー!」と拍手をした。私はびっくりして、クレメンティーネの人形の腕をとってしまった。(ティナはいまだに手紙でこの話題を出してくる)


 生まれたての仔鹿のように立つマックスの姿に、上の姉上達は感極まって泣いていたな。本人はというと、姉上たちから熱烈なキスを受けても微動だにせず、南瓜をじいっと見つめていた。


 おそらく、畑の洗礼を受けたのはその時だと思っている。


 その南瓜は中身をパイにした後、保存が効くよう塩で加工し、宮殿の子ども部屋に飾った。マックスは士官学校に入るまで、それを抱いて考え事をしていたよ。


 マックス。

 父親の務めは、妻と子どもを飢えさせないことだ。

 慈しみ深きお前なら、ファンデール国民の父として、民を養うことができるだろう。土を耕す心を忘れずに。


 エリザベート陛下、貴女には深い知性がある。たったの三年という期間で、ここまで国を立て直した能力は賞賛に値する。貴女の弛まぬ研鑽は、治世の中で大きく結実するだろう。


 ああ、また「堅苦しい」と妻から指摘を受けた。いずれ、夫婦でそちらを訪問したいと思っている。その時はよろしく。



          レオポルト

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