(6)書簡〈3〉第二大公女 カロリーネ
( 6 )書簡〈 3 〉第二大公女 カロリーネ
ごきげんよう義妹よ!
いよいよ明日、私たちの坊やがルヴェルに向けて出立します。
ますます美しくなった貴女と逢って、マックスはどんな顔をするのかしら。恋の炎が燃え上がる瞬間が見られないのが残念だわ。
私はいま、皇宮の小回廊でこの手紙を書いています。今まさに、キーシュ会談の壁画が飾られたところです。
アン兄さま、会談の時にカストーレの画家に近衛兵の格好をさせて傍につかせてたのよ! 我が兄ながら呆れちゃうわ! でも、そのおかげで女王の装いを詳しく知ることができるのだけれど。
まずは、矢車菊の花冠。ナドルヴィア国王の母君が愛した花なのですってね。初めて知りました。
そして、何よりも目を引くのは古代アビリア時代をなぞったシルエットのドレス。
色は淡藍。トリアノン・シルクのドレープは波のよう。胴衣はモントルイユ・レースで軽やかな質感がたまらないわ!
これからの夜会では、胸の下で切り替わる直線的なシルエットのドレスと総レースの胴衣が流行るわね。私も作らなくっちゃ。
ところでこの壁画の隣には、アルザスの画家が描いた【リクヴィル会談】がかけられているの。
そして、私は気づいてしまったわ。
リクヴィルとキーシュどちらも、エリザベート陛下のイヤリングの宝石が深緑じゃないの!
エルドラード王太子妃(文通仲間なの)から聞いたのだけれど、初めて外交の場に立った時も深緑のエメラルドを身につけてらしたのよね?
坊や、貴方の瞳の色よ! こんっなに想われてるのに、あなたったら馬鹿な子! もう、絶対に離れちゃだめよ!
――あらら、アン兄さまの枚数制限に引っかかっちゃったわ。残念。
同封いたしましたのは、帝室レース工場で編んだ【テレジアン・レース】です。ファンデールとエルドラードの技術を掛け合わせ、トルキア帝国の刺繍をモチーフにしたものよ。まだまだ最先端には程遠いけれども、十年後にはファンデールとエルドラードに並んでみせるわ。
ああ、戴冠式の装いが楽しみ! 新しい流行が生まれるに違いないわ!
落ち着いたらぜひ帝都に遊びに来てちょうだい。
あ、でもクリス姉上と私がルヴェルに行く方が早いかもしれないわ。花の独身を謳歌すべく、大陸横断を計画しているの。
お転婆リアーヌのかぼちゃ畑も見てみたいしね。その時はどうぞよろしく!
カロリーネ




