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二話

ハリー大好きです(●´ω`●)

 ハリー様との心の声をどのように活用していくかについての話し合いが進むにつれ、私は自分の能力について、知らなかった発見をするようになった。


 今まで誰にも相談できなかったという事もあって、実験的なことなど一切したことがなあった。


 アシェル殿下は優しさから私にそういう事を強いることも提案することもなかったのだけれど、ハリー様は違った。


 計画的に私の能力を数値化し、何が出来て、何が出来ないのかを具体的に調べるのに力を貸してくれた。


 集中すれば遠くの声でも聞こえること。


 ただ、人の声を聴き分けることは思いのほか難しいということ。


 名前と顔と声さえ聴き分けられれば、多人数の心の声を鮮明に聞き取れること。


 私は自分の心の声が聞こえるという能力について、自分自身が知らなさ過ぎたことに驚いた。


 それがハリー様が協力してくれることにより、出来ることと出来ないことが明確化され始めたのである。


 そしてそのことにより、私はハリー様から情報を得て、人の声というものに意識を向けるようになったのである。


 誰の声かを明確に理解しておけば、頭の中で誰の声なのかが分かる。そうすれば、その後情報の出所が調査しやすいのだ。


 大変で頭がパンクしそうにもなったけれど、これは絶対に今後国の為には必要になる。


 私はそう思い、ハリー様と特訓にいそしんだのであった。


 ただし、その合間にも妃教育は進められるので、大変なのは間違いなかった。


「エレノア、大丈夫?」

『隈が出来ている……むぅ……はぁ。心配だよ』


 ハリー様と特訓している時、アシェル殿下は時間があれば様子を見に来てくれた。そして今日も、お菓子を差し入れに持ってきて、私の様子を見てそう声をかけてくれた。


 私は笑顔で頷いた。


「大丈夫です。ハリー様のおかげで、私、自分のこの能力をうまく生かせそうです」


 これでアシェル殿下の役に立てると私はそう思ったのだけれど、アシェル殿下は困ったように眉を寄せると、私の両頬を優しく両手で包んでいった。


「んーっと、ごめん。こんなこと言ったらだめなのかもしれないけれど……僕はね、エレノアが僕と一緒にいてくれるだけでも、勇気をもらうんだ。だから、無理はしてほしくないんだ」

『たしかにエレノアの能力は、有用されると思う。だけど、エレノアの心が心配なんだ。無理はしてほしくない』


 その声に、私はアシェル殿下はやっぱり優しいなぁと思いながら、頬に触れた手に自分の手を重ねて言った。


「大丈夫です。私、嬉しいんですよ」


「え?」

『嬉しい?』


 私は頷くと笑顔で言った。


「これまで、この能力は私にとっては苦痛で、でも、アシェル殿下の役に立てるのなら、これは苦痛ではなくなります。ふふふ。だから、嬉しいんです」


 アシェル殿下は私のことをぎゅっと抱きしめると、大きく息をついた。


「はぁぁぁ。うん。ありがとう。でも無理はしないで」

『健気すぎるでしょう。むぅぅぅ。僕、頑張るよ。でも、無理したらだめだよ。無理したら、絶対に止めるからね』


「はい」


 私はアシェル殿下に抱きしめられて、幸せだなぁと思っていると、後ろからコホンと、ハリー様が咳払いするのが聞こえた。


 私達はそれに、慌てて照れながら離れた。


「ご婚約期間中ですので、あまりに過度なスキンシップはだめですよ」

『ぼん、きゅ、ぼーん。狼殿下』


 ハリー様の忠告に、私達はさらに顔を赤くしたのであった。


 後、最近ハリー様がたまにアシェル殿下のことを子犬殿下から狼殿下と言い換えることがあってなんでだろうかと私は小首を傾げるのであった。

 

 そんな私達だけれど、数日後、サラン王国現国王でありアシェル殿下のお父様に呼び出され、謁見の間へと向かうこととなった。


 一体なんだろうかと思っていると、謁見の間にて、国王陛下より私とアシェル殿下に一つの命が告げられた。


「五年に一度開かれる、周辺諸国の国交会が神々の守護する島にあるシュライン城にて開かれる。今回は二人で参加せよ。周辺諸国との関係を深めてくるように」

『数年以内にアシェルは王太子となるであろう。ならばここで経験させておく必要があるだろう。国交会は顔合わせの場。見事役目を果たして見せよ』


 神々の守護する島とは、争いごと全てが禁じられた聖地である。


 国交会が開かれるのは五年に一度であり、その役目とは国同士のつながりを強固にするものであり、責任重大である。


 私とアシェル殿下は恭しくその命を受けたのであった。


 二人で協力しての国交の場である。失敗は許されないけれど、交友関係を広げ、サラン王国と周辺諸国との絆を深める為には必要不可欠な行事である。


 その後私とアシェル殿下は王族専用の書庫へと移動すると、アシェル殿下が五年に一度開かれる国交会についての本をハリー様と共に集めて下さった。


 私はそこにある書物を読ませてもらい、国交会の歴史について知識を深めることが出来た。


 国交会の始まりは三百年ほど前まで遡る。


 周辺諸国には獣人の国やその他の小国なども連なっており、争いごとは多くあった。その中でも人間は獣人などに比べれば弱い種族であり、だからこそ、国交を重ね友好的な関係を築けるように知恵を絞ってきたのである。


 ただし、宗教については、どの国との関係も難しかった。


 何故ならば、各国それぞれに宗教は無数に存在し、その分、神々も存在していたからである。


 宗教が違えば考えも異なる。故に、宗教観でのいざこざも起こる。


 各国はそれぞれの信仰を持ち王国を築いていたのだが、それぞれの神々を崇めるがあまり、対立することが多かった。それを見かねたそれぞれの国の神々が、周辺諸国の中央に神々の守護する島を作った。


 神々は平和を願い、五年に一度、国交会を開き親交を深めるようにとの神託を各国へと伝えた。それが国交会の始まりと言われている。


 つまり、神という存在は多種多様に存在し一つではないと知らしめ、その上で神々は仲が良いのだということを民に伝えたのである。


 それ故に各国で信仰は広まり、他の国々の神を批判することがなくなったのである。


 島にはそれぞれの信仰神が集っていると言われ、神々の守護するこの島では争いごとは禁じられている。


「国交会、責任重大ですね」


 私がそう伝えると、アシェル殿下は頷いてから口を開いた。


「エレノア。今回の国交会では周辺諸国の方々の顔を覚え、情報を出来るだけ集めるとともに、友好的な関係を築いていけるようにしていきたいと思うんだ。僕達はサラン王国の代表としてしっかりと役目を果たさないといけない。責任は重大だけれど、よろしくね」

『僕とエレノアならきっと大丈夫。でもその為には、下準備もしっかりとしなければならないけれどね。大変だぁ~』


 アシェル殿下の言葉に私は深く頷いた。


 私はいずれアシェル殿下の妻となり国を支えていく立場となる。その為には、諸外国の方々との関係もしっかりと築いていきたい。


 責任は確かに重大である。けれど、アシェル殿下が一緒ならば頑張れる。


「はい。アシェル殿下。頑張ります!」


「うん。頑張ろう」

『えい、えい、おー!』


「えい、えい、おー!」

 

 私はアシェル殿下と共に声をあげたけれど、実際には一人で言っているので、少し恥ずかしくなって上げてしまった手を、すっと下げたのであった。


読んでいただける皆様に感謝です!

コミカライズを読ませていただいた私は、エレノアの可愛さに胸がトゥンクしました。

是非皆様とこの気持ちを共有したいです( *´艸`)

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