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二十五話

わぁぁぁ! 最終話です!


私達が蓋をすると、そこには、焼かれた地面だけが残っていた。


 あまりにも無残な状況であったけれど、先ほどまではカシュの闇によって見えなくなっていた太陽の光が見えたことにより、戦いに終わりが告げられたことが、その最前線で戦っていた者達には伝わった。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

『良かった! 生きている! 生きているぞ!』

「わぁぁぁぁぁぁ!」

『おれ、もう、だめかと思た……生きてるよぉぉぉ』

「我々の勝利だぁぁぁぁ!」

『わぁぁぁあ。生きている! 生きているぞぉぉぉ!』


 騎士達も魔術師達も手を取り合って喜び合い、そして歓喜に包まれていた。


 晴れ渡った青い空を見上げ、私とアシェル殿下も手を取り合うと、お互いを抱きしめあった。


「アシェル殿下、ご無事でよかったです」


「エレノア。ありがとう」

『はぁぁぁ。良かったー! もう、どうなるかと思ったけど、本当に良かった!』


『殿下! ぼん、きゅ、ぼん!』


 ハリー様がこちらに向かってかけてくるのが見えた。


 アシェル殿下はそんなハリー様の姿を見て呟いた。


「ハリーの頭の中は、こんな時でも、あれなんだろう?」

『ぼん、きゅ、ぼん』


 私はアシェル殿下が頭の中で呟いた言葉が面白くて、笑ってしまった。


 エル様は今は姿を消してしまっているけれど、私には傍にいるのが分かった。これが契約をしたという事なのだろう。


「エレノア、とりあえず、城の中に戻ろうか?」

『さぁ、行こう』


「はい」


 アシェル殿下は私の事を抱き上げると、横抱きにして歩き始めた。


 私は驚きながらも、ちょっとだけなら甘えてもいいだろうかと、アシェル殿下の胸に頭をもたげた。


『かーわーいーい! あぁ! 本当に、無事でよかった!』


 アシェル殿下の心の声に、私は心の中がほっこりしたのであった。



 今回被害は王城内の庭の一部と建物の一部くらいのものであり、被害は最小限に抑えられたという事で国王陛下からはお褒めの言葉を賜った。


 チェルシー様とカシュが封印された壺は国王陛下とアシェル殿下のお二人だけが場所を把握することとなった。


 今回の一件でノア様は療養中となり、現在は回復に向かっている。


 私はアシェル殿下とそれに途中の廊下であったジークフリート様と一緒にお見舞いに尋ねると、笑顔で出迎えてくれた。


「大丈夫ですか?」


 そう声を掛けると、ノア様は少し微笑みながら、私の頭を撫でた。


「大丈夫だ。心配するな」

『……俺は、エレノアを守る事さえできなかった。はぁ。情けない』


 アシェル殿下は私をさっとノア様から引き離すと、笑顔でノア様に言った。


「本当にご無事でなによりです。しばらく、ゆっくり休まれてください」

『もう! すぐ撫でるの禁止! 可愛いのは分かるけれどね!』


「ありがとうございます」

『ふふふ。仲がいいな』


 ノア様は少し落ち込んではいたけれど、無事で本当によかったと私は思ったのであった。


 ジークフリート様は今回は事件のあった時間、他国の要人をケガさせてはいけないと緊急避難場へとすぐに案内され、何があったのかは後からになっての説明となったらしく、すごく居心地の悪そうな顔をしていた。


「ご無事で何よりでした」

『僕は……僕は、何もしていない。くそっ。なんだその顔は!? ああぁぁぁ』


 なんだかよく分からないけれど、心の中は荒れすさんでいるようであった。


 アゼビアでは今回、異教徒による闇信仰が問題となっているらしく、ジークフリート様もこの後一度国に帰り、今回の一件について報告をするとのことであった。


 かなり大きな問題ではあるが、解決に向けて動き出しているようだ。


 ノア様のお見舞いが終わった後、ジークフリート様とは別れ、私とアシェル殿下は精霊のいなくなった中庭へと足を向けた。


 精霊がいなくなっても美しい中庭ではある。


 エル様は、私と一緒に行動が出来るようになったようだけれど、基本的に城の中にいる間は中庭でのんびりとしているとのことであった。


 ただ今までとは違い、私が呼んだ場所には城の外であろうと来られるようになったとのことであった。


 王城では、精霊と契約した私とアシェル殿下の結婚が望まれるようになり、国王陛下も最近では心の中で私の事を娘と呼ぶようになっている。


 私は実家とは疎遠になっているが、今回の私の活躍によりローンチェルト家も褒めていただき、両親はかなり喜んだと言う話を聞いた。


 ただ、どんなにローンチェスト家から家に帰ってくるよう手紙が届いても、アシェル殿下がその度に理由をつけて、帰省はしなくてもよいと言われた。


 私も、あの家にはもう帰りたくないと思っている。


「エレノア」

『見て』


 私はアシェル殿下と手をつないで庭を歩いていたのだけれど、アシェル殿下の声に視線をあげた。


「まぁ」


 木々には可愛らしい花の蕾が付き始め、春を知らせる鳥が鳴いた。


 温かな風が私とアシェル殿下の元を通り過ぎていく。


「春がきますねぇ」


「うん。エレノアと婚約して、もうすぐ一年だね」

『はやく結婚したいなぁ~』


「ふふふ。一年、いろんなことがありましたね。私も早く結婚したいです」


『かーわーいーい!』


 私はアシェル殿下の方がやっぱり可愛いなと思ってしまう。


 こうやって二人で並んで歩くことが出来る日々が、本当に幸福で、私は空に昇る太陽を見つめながら思った。


「アシェル殿下」


 私はエスコートしてくださるアシェル殿下の腕にぎゅっと引っ付くと言った。


「これからもよろしくお願いいたします」


 言葉とは、ちゃんと伝えなければ、悔いが残る。


 伝えられなかった言葉、伝えたかった言葉、言えなかった言葉。


 人はたくさんのことを思い、考え、そして相手に伝えたくて言葉を使う。


 心の声が聞こえるからこそ、私はちゃんと自分の思いは言葉にしていこうと改めて思った。


「大好きです。これからもよろしくお願いしますね」


 アシェル殿下は私の顔を見て、嬉しそうに少し顔を赤らめてうなずくと、私の事を抱き上げた。


「きゃっ」


「エレノアは本当に可愛すぎる!」

『もうさ、本当に僕をどうしたいんの!? かーわーいーいー! 大好き』


 そう言って私の事をぎゅっと抱きしめてくれる。


 私はこの瞬間が本当に幸せで、アシェル殿下に出会えたことを心から感謝した。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

『心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される』発売中です!

よろしければご一読いただけたら嬉しいです。おおよそ四万文字程度加筆してあります(●´ω`●) プラス書き下ろしもついております。一巻書き下ろし番外編ではハリーも活躍いたします!

編集者様と協力して作り上げていますので、この小説家になろうに掲載しているものよりもパワーアップしております!イラストは一巻に引き続きShabon様です。えぇ。皆様想像の通り、美しいイラストですよ。可愛いエレノアちゃんとアシェル君達をぜひ見ていただきたいです!よろしくお願いいたします。

最後までありがとうございました。またどこかでお会い出来たら嬉しいです。

かのん(もしくは 羽織かのん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが来て、改心したのに何考えてんだろうとずっと思ってたけどチェルシー…そういうことだったのね(気になったので間を置いてから一気読み) [一言] 罪のある人たちですが、この二人には願わくば…
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