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十三話

 話し合いの場は国王陛下の使われる貴族議員会議席で行われ、私もアシェル殿下の横で話を聞いていく。

 

 国王陛下は他の者達へと指示を出しながら、アシェル殿下に今後の指示は任せるとのことであった。


『アシェル殿下がこの大任にあたるということか。王太子となる日も近いな』


『あのチェルシーという女と闇か……はぁ。他種族というのはどうも難しい』


『エレノア嬢。今日もお美しい~。はぁ。今日は来れてよかったな。エレノア嬢、か、わ、い、い、ぞ~!』


 他の貴族たちの心の声も様々であった。


 そして、アシェル殿下の父上である国王陛下の言葉に、私はこぶしを握り締めた。


『先ほどエレノア嬢の報告も受けたが、ふむ。エレノア嬢か……傾国とは彼女のような女性を示すのだろうな。アシェルには悪いが、もしも、の場合が訪れれば彼女の今後もどうするかも考えていかなければならないな』


 自分の立ち位置は、いつでもアシェル殿下の横でなくなる可能性があるのだ。


 私はそれを感じて、頑張らなければと思った時、アシェル殿下と視線があった。


『エレノア。大丈夫? 父上、また変なことでも考えてた? 大丈夫だよ~。父上が変なこと考えていても絶対に成功はさせないから』


 その言葉にそんなことが出来るのだろうかと思っていると、アシェル殿下と国王陛下との視線が今度は交わった。


『父上。エレノアを政治的利用しようとか、まだ考えているの~? 絶対させないから』


『アシェルめ。生意気になりおって。まぁ、好きな女くらい自分の力で守り切れ』


 心の中で会話をしている二人を見て、私は親子で通じるものがあるのだなとそう思った。


 自分の両親とは大違いである。


 ふと、国王陛下と視線があった。


『まぁ、国際情勢は置いて置いて、私としても、エレノア嬢が娘になるのを楽しみにしているんだ。頑張れよアシェル』


 その言葉に、私は背筋を伸ばした。


 国王陛下は国の為に判断をする。けれど、自分の事を娘になるのを楽しみにもしてくれているのだ。


『うちは男だけだからなぁ。娘。ふむ。いいな。パパと呼ばれたい』


 私は思わず吹き出しそうになったけれど、奥歯をぐっと噛んで堪えた。


 さすがはアシェル殿下のお父様である。


『腹黒ひげおやじ。ぼん、きゅ、ぼーん』


 私はもう一度奥歯をぐっと噛んだ。たまに不意にハリー様は呟くので本当にやめてほしい。何故今のタイミングで呟いたのだろうか。


 私はそっとハリー様に視線を向けると、資料をめくりながら仕事をしている様子であり、私は何とも言えない気持ちになった。


 それから数日後、また平穏な日常が帰ってきていた。


 闇や悪魔と抽象的な名前で呼ばれていたけれど、チェルシー様が読んでいたカシュという名前で今後は統一し、何かしらの問題が起こった時にはカシュという名前にて報告をまとめるようにと指示があった。


 闇や悪魔と呼ばれるカシュが今後どのような動きをするのか、また対策はどのようにとっていくのか、魔術師様を交えて定期的に会議が開かれるとのことであった。


 私は自室にて妃教育を受けながら、不意に視線を外へと向けた。


 雪がちらちらと降り始めたのが見えた。


 暖炉の火があるからこそ部屋はとても温かだけれど、外はとても寒いだろう。


「それでは、今日の授業はここまでにいたします。エレノア様、お疲れ様でございました」

『素晴らしいわ。本当に。エレノア様であれば立派な国母となるでしょう! アシェル殿下は幸せでございますねぇ~』


「先生、今日もありがとうございました」


 先生は小さく頷いて一礼すると、エレノアの机の上にいくつかの参考書と資料を乗せ、楽し気な口調で言った。


「我が国は多種多様な種族の皆様と友好的な国を築いてまいりました。それ故に他国との交流の場も多く、学ぶことが多いですが、頑張りましょう。今日は参考資料を置いて置きますね。では本日はこれで失礼いたします」


 先生はそう言うと部屋から出ていった。


 私は残された資料をちらりと見た後に、窓の外で降り積もり始めた雪を見つめ、それから侍女を呼んだ。


 ベルを鳴らすと侍女がやってきて、私は少しだけ外に散歩に出ることを伝えた。侍女達はすぐに温かなローブや手袋、マフラーなどを準備してくれる。


「ありがとう。少し散歩してくるだけだから、一人で行ってくるわ」


「では、少し離れた位置に待機しております」


「えぇ。ありがとう」


 魔術師達の対策により、カシュや妖精達でさえも城の中に無断で入れないようにといたるところに魔法陣が配備された。


 妖精達にはしっかりとゲートの位置を固定してもらい、来るときにはせめて一時間前には一方を入れてもらえるようにとの協定を結んだ。


 ただ、ユグドラシル様だけは不満そうであったが、緊急時以外はちゃんと連絡をするとの事で納得してくれたようだ。


 いくら頑張ったところで、多種多様な種族がいる中で絶対の平和などない。


 それでも私達はこの世界で一生懸命に生きていくしかないのである。


 庭は一面雪化粧となり、空からはちらりちらりと雪が降ってくるのが見えた。


 灰色の空を見上げて、私は落ちてきた雪を手袋をした手で受け止めた。


「綺麗」


 このまま平和な日々が続けばいいなぁ。


 そんなことを思っていた時、傘を片手にノア様がこちらへと歩いてくるのが見えた。


「ノア様?」


「エレノア嬢。こんな雪の日に散歩か?」

『風邪をひくぞ』


 こちらに傘を傾けてくれるが、私としてはローブも来ているし大丈夫だと思い断ろうとした。だが、その時、反対側から私の上へと傘がかかり、私は後ろを振り向いた。


「あら?」


 そこに立っていたのはジークフリート様であり、私はいつジークフリート様は帰って来たのだろうと言う疑問と、ノア様もどうして王城内にいるのだろうかという疑問を抱く。


『なんだ? この男は』


『っは。竜の王子か。エレノア嬢に馴れ馴れしいな』


 何故か睨み合う二人を見つめながら、私はチェルシー様の言葉を思い出す。


 好感度を上げておくこと。


 ここはゲームの世界ではない。けれど、もし好感度が低かった場合、この世界はどうなるのであろうか。


 何か起こるのであろうか。


「あの……」


 私は二人に思わず尋ねてしまった。


「お二人は、私の事、嫌いですか?」


 もし嫌われていた場合、この世界はどうなるのであろうか。



クリスマスソング、自分が覚えている歌詞と全然違う時がある。なーぜー????

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