プロローグ
お待たせいたしました! 第二章開幕です!
桃色の花弁が舞う中に、小さな心の声が聞こえた気がした。
辺りを見回せばそこは美しい花畑のような場所であり、目を凝らせば川が見えた。よくよく耳をすませば、水が流れていく音が聞こえた。
ただ、水の流れる音と、花弁が風に舞う音しかせず、静寂の中で、その心の声は以上に響いて聞こえた。
『憎みたくない。けれど、憎んでしまった』
自分に対する嫌悪感と後悔。ない交ぜになった感情は、いつ聞いても自身が体験したような感覚に陥り、心が揺さぶられる。
『ごめんなさい。ごめんなさい……貴方は悪くなかったのに』
泣き声と共に聞こえてくる声は小さく、繰り返し、繰り返し、謝罪を紡ぐ。
一体どこから聞こえてくる声なのか、これは夢なのか、それとも。
私はその声に戸惑いながらも、口を開こうとした時、ふと、視線の先に少女が立っていることに気が付いた。
栗色の髪の見たことのない少女だった。
『お願い』
まるでピントがずれているかのように、その表情は見えず、私はどうにか少女を見ようと目を凝らす。
『どうか、あの子に、伝えて』
何をだろうか?
そしていったい誰に伝えればいいと言うのであろうか。
『ごめんなさいって……謝っても、許されることじゃないけれど……』
一瞬でそれは霧散し消えていった。
誰に向けての言葉だったのかもわからず、私は重い瞼を開けると、自分の耳に触れて先ほどの言葉を思い出す。
「……誰にそのごめんなさいを伝えればいいのかしら……」
ただの夢だったのだろうか。それにしては生々しくて、私は窓に映る月の影を見上げたのであった。
2022,12/10よりTOブックス様より【心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される】発売開始です! よろしくお願いいたします! 各書店様やAmazonでも販売しております。また、コミックシーモア様やピッコマ様などweb上でも配信開始しております。
読んでくださる皆様に感謝です! 書籍化できたのも、皆様のおかげです(●´ω`●)
しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ('ω')ありがとうございます!
担当編集者様と作り上げた、とても素敵な一冊です。イラストはShabon様です。神がかった美しいイラストは、心を撃ち抜かれること間違いなしです。
寒くなってまいりました! 体調には皆様お気を付け下さいませ。