六十七話 これから歩んでいく道
私は、自分の能力と向き合い、そしてその上でアシェル殿下と共に歩んでいきたいと思った。
視察の帰り、私はアシェル殿下と一緒に街を見下ろせる小高い丘へと登ると、そこで少しだけ二人きりの時間を設けてもらった。
夕日に照らされる街はとても美しく、私はまっすぐにこうやって街を見下ろすのは初めてだなと感じる。
「エレノア? どうしたの? 何か、心配事でもあったの?」
私の様子をうかがうようにそう尋ねてくれるアシェル殿下に、私は向き合うと、勇気を振り絞って言った。
「私、アシェル殿下が好きです」
「え?」
突然の言葉にアシェル殿下は顔を真っ赤に染め、そして頬を赤らめながら言葉を返してくれる。
「あー。もう! もう! 突然どうしたの? そんなに可愛いこと言って、何? 僕を試してるの?」
『だめだ。頭の中でも考えちゃう! わぁぁ。もうこれはもうエレノアが可愛いのが悪い!』
アシェル殿下は可愛い。いつも私はその可愛らしい心の声に翻弄される。だって、こんなに可愛い人に出会ったのは初めてなのだ。
アシェル殿下に出会ってから、私は心の声が悪いことばかりではないのだと知った。
アシェル殿下がいてくれたから、私はこの能力があってよかったと思えた。
アシェル殿下が、好き。
私はアシェル殿下を見上げると、その頬に手を伸ばした。
「貴方に出会えて、私は幸せです」
アシェル殿下の顔は夕日に照らされているからか、いつも以上に赤らんでいた。
「エレノア」
「え?」
私の唇にアシェル殿下の唇が触れた。
突然のことに私は驚いて固まってしまう。
「エレノアが、可愛いのが悪い。もう。僕だって大好きだよ。君以上に可愛い人なんて知らない。本当に、僕の婚約者になってくれてありがとう」
恥ずかしかったけれど、私は勇気を振り絞ってアシェル殿下に抱き着いた。
アシェル殿下の心臓の音と、心の声が聞こえる。
『え、エレノア! 僕だって男なんだからね! もう……エレノアが可愛すぎる。むぅぅぅ』
異性の心の声がこれまでは怖かった。
けれど、アシェル殿下は大丈夫。こんなにも可愛い人はいないし、そしてアシェル殿下にならばどんな声が聞こえても大丈夫な気がする。
「アシェル殿下、私、頑張ります。だから、これからもよろしくお願いいたします」
「うん。もちろん。僕こそよろしくお願いします」
私たちは笑い合い、そして街を見つめた。
綺麗だった。世界がこんなにも美しいのだと私はちゃんと見てこなかったから気づいてさえいなかった。
『ぼん、きゅ、ぼーーーん。殿下をよろしく』
最後の最後に、遠目からこちらを見守っていたハリー様のその声が聞こえて私は心の中で返事をした。
『はい。可愛いアシェル殿下を大切にします』
自分のあだ名はずっと”ぼん、きゅ、ぼーん”なのだなぁと、いつかハリー様にもう少し可愛いあだ名にしてもらえないか提案してみようと思うのであった。
とりあえず、67話にて、第一部完結っていう感じです。これからしばらく第二部に向けて書いていきたいと思いますので、更新が一度止まります。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!!(*´▽`*)皆様の応援があったから、私、小説が書けます(●´ω`●)
少ししたらまた投稿始めますが、投稿頻度は落ちると思います。それでも読むよ!っていう方は、待っていていただけると嬉しいです。(*´▽`*)待っていて、くれる人が……いてくれることを祈って、頑張って書きますね。
作者 かのん