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六十六話 アシェル殿下

 事件の一件から一週間ほどが経ち、私たちの生活は落ち着きを取り戻していた。


 妖精や獣人達もそれぞれの国に帰り、平和が訪れる。


 ユグドラシル様はこれからも時々遊びに来ると言っていたので、またそのうち顔を見せてくれるだろう。


 カザン様も、また子どもたちを連れて遊びに来てくれると言っていたので私はまた皆に会えることも楽しみだなと思っていた。ナナシの刑については、裁判が行われたのちに知らせてくれるとのことだった。


 最終的にチェルシー様は、現在の眠っている状況で何かをした場合、何が起こるかわからない危険性があるとのことで、王宮から離れた神殿に幽閉されることになった。目覚めたとしても、神殿に幽閉され、その生涯が終わるまで奉仕作業をすることになるだろう。


 ユグドラシル様もカザン様もとても別れを名残惜しそうにしてくれて、私も寂しく思った。


 何故かアシェル殿下は複雑そうな顔で『心配が尽きないよ。はぁ、早く結婚したい』と呟いていた。


 私としても早く結婚はしたいけれど、王妃教育がまだまだ未熟な私としては現実的にまだ学びの時間が必要だということは分かっていた。


 そして今日は王妃教育の一環として、アシェル殿下と一緒に街の視察に来ているのだが、町の人々の視線が今までとは違っていて、私は恥ずかしくいけれど、どうにか顔をあげて平静を装っていた。


『あの人が、エレノア様かぁぁ。アシェル殿下は幸せだろうなぁ』


『妖精に愛される乙女だって噂の人だよなぁ……妖精より美しいじゃないか?』


『うっはぁぁぁ。獣人の王子達がメロメロになるはずだ』


 ナナシの事件から噂が広がり、街では私の様々な話が持ち上がり、枝葉のような広がりを見せていた。


『男を虜にしてしまうなんて罪な女ねぇ。でも、あの美しさならしょうがないわぁ~』


『男達が取り合って最終的にアシェル殿下の勝利とかなんとか噂があったが、アシェル殿下よくやった! あんな美しい人が王妃になるなんて、っはぁ! 最高だな』


 街の商店街を視察していると、様々な声が聞こえてくる。


 男性から向けられる生々しい感情ではなく、どこか称賛を含んだような言葉が聞こえてきて、私は何となく恥ずかしいけれど、どこか嬉しさも感じていた。


 アシェル殿下の横に立つのにふさわしい女性になりたい。私はそう思うようになっていた。


「エレノア? 大丈夫かい? もし、不安なこととか、心配なこととかあったら言ってね?」


 こちらを気遣ってくれるアシェル殿下の優しさが嬉しくて、私はもっと頑張らなければと思った。


 アシェル殿下の横に立つということは、国民に愛される王妃を目指すということでもある。私に本当にそれが出来るのだろうかという不安はあったけれど、実際に街を視察して、私の決意は固まりつつあった。


 今まで、人から向けられる心の声が怖かった。


 けれど、私の横にはアシェル殿下がいつもいてくれる。


 私は、しっかりと前を向いて、心の声と向き合っていくことを決意した。




 

 

毎日があっという間に過ぎていくと思うのは私だけですか? 朝が来たかと思えば気づけば夜です。わぁびっくり(/ω\)


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