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六十四話 ノアの心

 ノア様は、本来ならばあの場には来れないはずだったのだけれど妖精ユグドラシルの手によって、獣人の事は獣人が、竜人の事は竜人が片をつけるのが道理であると呼び出されたらしい。


 竜の国は滅ぼされてしまったが、その主犯であるナナシとチェルシー様を捕らえられたことで、ノア様は少しだけ報われたようなそんな表情を浮かべていた。


 心の声も落ち着いていて、恨みに呑まれることなく前を向いているようで私はほっとした。


 事件から数日が経ち、私はアシェル殿下と共に客室にてノア様と向かい合って座っている。


「ノア様……助けていただきありがとうございました」


 そう告げると、少し困ったような表情をノア様は浮かべていた。


『恩を……少しは返せただろうか……それにしても、手を伸ばせばそこにいるのに、手が届かないな』


 どういうことだろうかと小首をかしげると、横にいたアシェル殿下が私の腰に手をまわしてにこやかな表情で口を開いた。


「ノア殿のおかげで、エレノアを助けられた。本当に感謝する」

『ダメだよ。エレノアは僕のだ』


 アシェル殿下の心の声に、内心ドキドキとしながら、そんな心配必要ないのにと心の中で笑ってしまう。


「いや、本来ならば軟禁状態の俺が行くことは叶わなかった。エレノア嬢がユグドラシル様を元々助けたことが今回のきっかけ。俺としては同胞の敵を討てた。こちらこそ感謝しかない」

『この男のものではなければな……幸せそうな姿を見れば、気づいてしまったこの気持ちなど、無意味なものだ』


 どういうことだろうかと思いながらも、その後話は進み、ノア様は元の屋敷へと帰っていった。どこか私を見つめる瞳が寂しげに見えたけれど、その心は前を向いており私はほっとした。


 恨みでは人は前に進めない。


 でも、きっとノア様ならばこれからちゃんと前を見て未来へと歩んでいけるだろう。


「ノア様、大丈夫でしょうか」


 私がそう呟くと、横にいたアシェル殿下は少しだけむっとした表情で口を開いた。


「エレノア。あのね、他の男の心配はしなくていいよ」


 最近のアシェル殿下は思ったことをそのまま私の前では口にするようになった。だから副音声のような心の声は聞こえないのだが、その代わり、私は首をかしげてしまう。


「えっと……私何か間違えましたか?……」


「違うんだよ。そういう意味じゃないんだ。何ていえばいいのかな。男っていうのはね……いや、知らない方がいい。エレノアはそのままでいて。あぁぁぁぁ。僕って心が狭い男だよ。本当にさ!」


 ぶつぶつと呟くアシェル殿下が可愛らしくて、私は思わず笑ってしまう。


 けれど、不意に思い出すのだ。


 まだ眠っているままのチェルシー様と、ナナシという男について。


 一応事件の終息はついたが、これからチェルシー様とナナシは裁判にかけられることになる。


 私はそれをしっかりと向き合い、ちゃんと結末まで見届けなければならない。


 そう思った時であった。部屋の中ににぎやかな声が響き渡り、ユグドラシル様と獣人のカザン様が楽し気な様子で入ってきた。


 ノックはどこへいったのやら。


 私はなぜか意気投合している二人を見て、少しだけ心が明るくなった。



ノア……好きなキャラなんですよ。もう主役はっちゃうようなキャラなんですよ。ごめんな。ごめんなぁぁぁぁぁぁぁ(/ω\)

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