六十一話 戦い
「男を捕らえるぞ」
アシェル殿下の言葉に騎士達はうなずき、剣をかまえる。
男の笛の音に操られた獣人達はこちらに襲いかかってくるが、洗練された騎士達はアシェル殿下と私を守るように戦い、動きに翻弄されて乱れることれない。
「エレノア! しっかり捕まっていて!」
「はい!」
私はアシェル殿下にしっかりとくっつく。本当ならば私を下ろした方が戦いやすいだろうが、アシェル殿下は私をしっかりと抱えていた。
「焼けるなぁ。エレノア。来いよ。お前を絶対に幸せにしてやるから」
『どんな能力があるかは、後で確かめればいい。とにかく拐う!』
男の言葉に私は返事を返す。
「嫌です!」
次の瞬間、痺れを切らしたように男はアシェル殿下を攻撃を仕掛けようと、獣人を盾にして近づく。
アシェル殿下は男の剣を自身の剣で受け止めると言った。
「諦めろ! 逃げられはしない」
『くっ。獣人を傷つけずには無理だ』
獣人達は自身がいくら傷を被うと、操られるままに痛みを無視して戦い続ける。
それは見ていて痛々しく、アシェル殿下の悔しさが私にも伝わってきた。
私は視線を獣人を操る男が首から下げる笛へと向けた。
あれさえあれば。
『くそっ! ええい! こうなれば獣人達など死んでも構わん! 俺の盾となれ!』
獣人達がアシェル殿下の前へと、飛び込んでくる。
アシェル殿下は切るのを躊躇った。
その瞬間男が剣を振り上げアシェル殿下へと振り下ろす。
「させないわ!」
私は両手を広げてアシェル殿下を守ろうと男へと飛びかかった。
「なっ!?」
『くそっ!』
「エレノア!!!」
男は剣を止め、私の体を片腕で受け止める。
私はその瞬間、男の首からかかる笛を奪い取ると、勢いよくそれを吹いた。
獣人達は動きを止め、私は笛を出来るだけ遠くに向かって投げる。
「エレノア! さっすがぁ!」
その笛を受け止めたのは妖精のユグドラシルであり、ユグドラシルはその笛を魔法を込めて粉々に壊した。
「くそがぁ!!!」
男の声が響いた時、ユグドラシルはにやりと笑うとパチンと指をならす。
「さぁ、報復される覚悟はある?」
『獣人達はかなりご立腹よ!』
ユグドラシルが指を鳴らしたのが、魔法の仕掛けなのか、扉が光に包まれて出現すると、そこから甲冑を身につけた獣人達が颯爽と現れた。
「同胞を傷つけた者を捕らえよ! 怪我をした者達を救出せよ!」
『逃がさんぞ』
獣人達を指揮するのは、獣人の国の王弟であるカザン様であり、こちらにちらりと視線を向けるとウィンクしてきた。
一体何がどうなっているのか、私には分からなかったけれど、それでもどうにか男の腕から逃げ出さなければと身をよじった。
お昼ですね。お昼ごはん食べましたか? お腹がすきます(*'ω'*)