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五・五話 結局私は悪役令嬢

読んでくださりあありがとうございます!

 アシェル殿下の婚約者となった私は、頻繁に舞踏会へと参加するようになった。


 以前までは、舞踏会も必要最低限しか出ていなかったのだけれど、今ではそうもいっていられない。


 鏡に映る自分の姿に、私は深々とため息をつく。


 赤い華やかなドレスを着ても、見劣りすることのない派手な顔。その顔に手で触れ、私は大きくため息をついた。


 せめてこんな顔に産まれていなければ、そう思うけれど、そう考えたところで意味はない。


 私はもう一度深々とため息をついてから、立ち上がった。


 舞踏会は好きでない。たくさんの声が混ざり気分は悪くなるし、男性達の視線は私にとっては気分の悪くなるものでしかなかった。


 けれど。


 アシェル殿下と待ち合わせの控室へと向かうと、そこには王子様らしく白い衣装を身に纏ったアシェル殿下がいた。


 にっこりとほほ笑み、こちらへと歩み寄ってくる。


「エレノア嬢。今日も素敵ですね」

『わぁぁぁぁぁ。今日も可愛いなぁ。赤いドレスをプレゼントして本当に良かった。エレノア嬢には赤がよく似合う。あ、でも今度はまた別の色のドレスにしよう。あぁぁぁ。でも、これ、他の男も見るのかぁ。うーん。それはちょっと考えものだよねぇ』


 頭の中は相変わらず忙しいアシェル殿下に、私は笑みを向ける。


「アシェル殿下も素敵です。ドレスも、本当にありがとうございます。今日もよろしくお願いいたします」


「とてもお似合いです。では、行きましょうか」

『笑ったぁぁぁ。わぁぁぁ。何か、これだけで僕、頑張れる。うん。可愛い婚約者がいて僕は幸せだなぁ』


 アシェル殿下の声は、とても澄んでいて、私は舞踏会に向かう足取りが軽くなる。


 舞踏会では王族の挨拶が終われば、各貴族が話に興じたり、ダンスに興じたりという時間が流れていくのだが、私はアシェル殿下と踊った後は、女性達が談話する場へと移動した。


 アシェル殿下は、他の貴族達と話をしており、後程こちらへと迎えに来てくれる手筈となっている。


 本来は、女性達が談話する場へと男性がダンスに誘いに来ることはめったにない。


 けれど、私の場合、気を付けなければすぐに男性が近寄って来るので困りものである。


 なので、私は出来るだけ同じ場所にはいないように、心の声を意識しながら移動しては、男性に捕まらないようにしなければならないのだ。


 たまによからぬ考えを持つ者もいるので、そうした声には特に意識しながら逃げるように移動していくようにしている。


 そうしていくことで、自分の身をこれまでも守ってきたのだけれど、婚約者という盾が出来たことで油断していたのであろう。


 私は今、テラスに隠れながら息をひそめていた。


「エレノア嬢、どちらにいますか?」

『俺の最愛の人よ。どこに隠れているんだ? くそ、くそ、くそ……どうにかして俺のものにしなければ。このままだったら殿下の物に……くそくそ』


 声が聞こえ聞こえ、私は慌ててカーテンの後ろへと身を隠した。


 鷲色の髪と瞳をしたローエン公爵家のエドガー様は、以前から私のことを見かけては追いかけてくる人であり、二人きりにならないように意識してきたのだが、今回は以前よりもしつこい。


 アシェル殿下の婚約者となって諦めると思っていたのだが、以前よりもしつこさが加速している気がする。


「エレノア嬢。隠れても無駄ですよ」

『俺の物だ。俺の物だ。絶対に、絶対に逃がすものか』


 恐怖が胸の中を渦巻、私は震えながらカーテン裏に隠れるのだが、足音が近づいてくる。


 こんなことであれば、居心地が悪くて女性達の輪の中にいるべきであった。

 

『まぁ、また男性を惹きつけて、はしたない女性ね』


『ここにいないでほしいわ』


『アシェル殿下も、男だから、きっとこの女にメロメロなんでしょうねぇ。はぁ、男って本当に顔と体で女を見るんだから』


『傍にいたくないわ。引き立て役何てごめんだもの』


 そうした声に耐えかねて移動してしまったのがいけなかった。


 怖い。


 怖い。


「みーつけた」

『俺の物だ』


「ひっ」


 私は恐怖で息を飲んだ。







 


 




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