表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/176

五十四話 舞踏会

 男と会ってからしばらくたち、私は久しぶりに開かれる舞踏会に参加することが決まった。アシェル殿下は無理して参加する必要はないと言ったけれど、私が参加したかったのだ。


 あまり長く社交界を休むと、いらぬ噂がたつ可能性もある。


 現在男についてもチェルシー様についても内々に調べが進められているという。


 もちろんエスコートをしてくれるのはアシェル殿下であり、私は多少浮かれながら、舞踏会の準備を済ませ、アシェル殿下を待っていた。


 舞踏会は、今でもあまり好きではない。


 けれど、アシェル殿下と一緒にいられることは、とても嬉しかった。


「エレノア。今日もきれいだ」

『はぁぁぁぁぁ。可愛い。本当に。ねぇ? そんなに可愛くってどうするのさ』


『ぼん、きゅ、ぼん』


 私は微笑みをアシェル殿下に向ける。


 アシェル殿下もハリー様もいつも通りで私はあの男が現れた夜が今では幻だったのではないかと思えるほどだった。


 あの日以来、何も起こらない。


 チェルシー様への尋問は進んでいるようだが、結局はそれ以上進展はなく、チェルシー様が言っていた拠点には誰もいなかったのだということであった。


 チェルシー様もそれを聞き、自分が切られたことを悟ったのか、それ以来、以前のような明るさはなくなったという。


 私は、この世界はゲームではないのだと改めて思いながら、今後どうなるのだろうかと心配になっていた。


 ただ、今日は久しぶりの舞踏会であり、心配する思いは忘れようと、アシェル殿下に差し出された手を取った。


「アシェル殿下も素敵です」


「ありがとう。では行こうか」

『可愛いなぁ。もう。』


「はい」


 アシェル殿下の手を取り、舞踏会の会場へと移動する。


 長い渡り廊下を抜け、そして舞踏会会場の入り口に立つ。この時が私は一番苦手だ。


 人々の洪水のような声にいつも頭の中がぐるぐると渦巻き、気分が悪くなる。けれど、アシェル殿下の手を握っていると、それも大丈夫のように思えた。


 ファンファーレと共に、私とアシェル殿下は会場へと入場し、たくさんの人々の拍手を受ける。


 それと同時に渦のように人々の心の声が私の耳をつんざいていく。私はそれを表に出さないようにしながら微笑みを携える。


 その時だった。


『さぁ、今日は君を連れて帰れるといいなぁ』


 あの男の声が、私の頭の中に響き渡った。


 この会場のどこかにいる。


 それが分かった瞬間、私は恐怖を感じた。


「エレノア?」

『どうかしたのかな?』


 横にはアシェル殿下がいた。私はそれを思い出し、微笑みを顔に張り付け、そしてアシェル殿下の腕をぎゅっと握った。


「なんでもありませんわ。行きましょう」


 ここは城の舞踏会である。男を捕まえるなら今日が勝負になるかもしれない。


 私は覚悟を決めると、会場へお足を進めたのであった。



 

とりあえず、後少し!! 勢いで乗り切る( *´艸`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズはこちらから

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
小説版のサイトはこちらから

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ