五十一話 転生者
この世界は馬鹿な奴らばっかりだ。
転生者が自分だけだと思ってやがる。
俺自身もまた転生者の一人だ。ただし、この世界が何の世界なのかは知らない。
だが見つけた。
「この世界はね、私がヒロインなの。それでね、これは略奪ゲームなのよ」
路地裏で拾った一人の子ども。
チェルシーは自分がヒロインだと言い、この世界について俺にぺらぺらと楽しそうに話し始めた。
バカな女だ。
転生者が自分一人だけだと勘違いしている。
俺はその子どもを自分の都合の良いように育て上げた。俺の言うことが全て正しいと認識させ、俺には逆らえないように教育をした。
ゲームとか略奪とかに俺は興味がない。
ただし、チェルシーの持っている情報を利用すれば金を稼ぐのにはちょうど良かった。
竜の国を憎む者たちは多かった。だからそれを利用した。
竜の体は高く売れる。
計画が全てうまくいったわけではないが、俺は巨万の富を得た。
チェルシーがアシェル王子を射落とせば国まで手に入る。そう思っていたが、チェルシーからの連絡では、悪役令嬢がちゃんと動いておらず、男たちを落とせないのだと愚痴が書かれていた。
なるほど。
俺は悪役令嬢エレノアは転生者であると仮説を立て、チェルシーの行動とその周りの動きを観察し、そしてその仮説が正しいであろうと確信した。
転生者とは厄介なものである。
ここら辺が引き際なのかもしれないと、俺はチェルシーを切ることに決めた。
現在チェルシーが牢へと入れられているらしいが、こちらの情報などチェルシーはほとんど持っていない。
もう二度とチェルシーに会うことはないだろう。
「さぁ、後は豪遊しながら一生を楽しく生きるかなぁ」
最後に転生者であろう悪役令嬢でも見てから出立するか。
王城の月明かりに照らされる一室。
「だぁれ?」
ベッドから起き上がり、こちらを見つめるその美しい女に、俺は動きを止めた。
傾国の美女とはこの女を示すに違いないと、頭の中で、やめておけと警笛が鳴る。
全てを失うぞと、警笛が煩く響く。
「っは! 略奪ゲームねぇ……こんな女からチェルシーが略奪できるわけがねぇ」
この女が欲しい。
本能がそう告げる。
あぁ。俺もまた、もしかしたらこの世界における駒の一つなのかもしれない。
ぼん、きゅ、ぼん vs すとーん