四十六話 暗躍し始めるヒロイン
あぁ。
どうしてこうもうまくいかないのよ。
私は抱きしめあうアシェルとエレノアを見つめながら親指の爪を噛む。
いらだつ。
今の時点で誰一人として私は手に入れていない。それなのに、エレノアはみんなの心をつかんでいく。
略奪ゲームがここまで難易度が高いなんて思ってもみなかった。けれど、原因は難易度が高いというだけなのだろうかという疑問が生まれる。
「あの悪役令嬢が、ちゃんと動かないからいけないのよ」
爪をぎりぎりと噛みながら、何故ちゃんと悪役令嬢が動かないのだといらだってしょうがない。
私は部屋へと帰ると、一通の手紙が届いていた。
「あぁ。お父様からだわ」
真っ赤な手紙には、お父様の文字が並ぶ。
とにかく、この国を手に入れなければお父様は納得しないだろう。
その為にはアシェルをエレノアの魔の手から救い出さなければならない。
「仕方ないわ。媚薬でも使ってみようかしら」
悪役令嬢が機能しない以上、アシェルの心をどうにかしてでも自分の方へと向けなければならない。
ならば媚薬を使って自分を襲わせるというのもいいだろう。
「私を襲ったとなれば、きっと心優しいアシェルは、私を放っておくことはできないわよねぇ」
媚薬の入ったピンク色の小瓶を揺らしながら、私は楽しくなって笑い声を漏らす。
「あ、どうせなら、ハリーにも飲ませようかしら。きゃっ二人して私を取り合うの! いいわぁ。あぁ、でもそれだと純粋なアシェルは傷つくかしらぁ……仕方ない。今回はアシェル。次にハリー。順番に行きましょう」
うふふっという気持ちの悪い声がもれる。
「あぁ。楽しみ。お父様もそろそろしびれを切らしそうだし、頑張らないとね」
チェルシーは小瓶を見つめながら楽し気にベッドの上で転がった。
たくさんの感想ありがとうございます。執筆を優先しているので返せませんが、感想はいつも励みにしています。感想にて笑いをもらい、元気をもらい、主人公よりも人気の出るハリーに恐れをなしつつ、今日も頑張ります。