三十話 エレノアの思い
ガゼボへと移動をすると、並んで座り、私たちは庭の花々を眺めながていた。
アシェル殿下は静かに言った。
「私の代わりに傷を受けたチェルシー嬢ですが、男爵家の令嬢で、今は私の恩人という形で王城で治療と療養をしてもらっています。」
『どこまで、どう話そうかなぁ』
私はうなずきアシェル殿下の言葉を待っていると、言いにくそうに間が開いたのちに、アシェル殿下は言った。
「おそらくですが、何らかの組織にチェルシー嬢はかかわっていると思われます。ですから、今後、私がチェルシー嬢と仲良さげに話したとしても勘違いはしないでください。あくまでも、表面上です」
『チェルシー嬢に好意を寄せてるとか、勘違いされたら、僕辛すぎる。あー。くそぉ』
なるほどと理解しながら、私は尋ねる。
「では、私も仲良くした方がいですか?」
「いや、エレノアは距離を取って下さい。危ないです」
『エレノアを誘拐した事件にも、チェルシー嬢がかかわっていそうだし、出来れば離れていてほしいなぁ』
私はうなずく。
アシェル殿下は私の様子にほっとしたようにうなずき返すと言った。
「とにかく、チェルシー嬢には少し気を付けていてくださいね」
『こちらの情報を得ようとするような動きもあるから、十分に気を付けてほしい……はぁ、というか早くチェルシー嬢を家に帰したい。けど帰せない……くっ』
「気を付けますね」
私は話題を変えようと、アシェル殿下に話をしておこうと思っていたことを口を開いた。
「あの、うちで今預かっている獣人の子どもたちなのですが、獣人の国へと返したいのです。アシェル殿下どうにか獣人の国との連絡をどうにか取れないものでしょうか」
どうにか獣人の子たちを家族がいるならば家族の元へと返してあげたい。
アシェル殿下は少し考えるとうなずいた。
「獣人の国には一応、一報は入れてあります。ただ、獣人の子どもがこちらの国に来るということ自体、かなり珍しいことなので、どうやって来たのかなど、確認しなければならないことがいろいろありますね」
『獣人は元々昔売買などがされていたこともあって、今はかなり規制が厳しいはずなのに、どうやってこの国に来たのかな……』
「そうなのですね……できれば早く帰してあげたくて」
私がそういうと、アシェル殿下もうなずくと言った。
「えぇ。そうですよね。わかっています。できるだけ早く手続きができるようにしますから」
『それに、獣人の子どもたちすごくエレノアにべったりだって聞くし、あんまりべたべたされるのは……ちょっといやだなぁ、あぁ! 僕って本当に器が狭い!』
そう心の中で呟くアシェル殿下に、私は、自分のことを少しは好いていてくれているのだろうかと期待してしまう。
できるならば、アシェル殿下との仲をもっと深めていきたい。
私は勇気をもって、それを伝えようと口を開こうとした時であった。
どこからか、雄たけびのような声が聞こえて、びくりと肩を震わせた。
私が好きなキャラはハリー。いつかハリーの短編も書いてみたいです。