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二十八話 ヒロイン様

 ノアとの面会の数日後、私はアシェル殿下と共に王城内で一緒に時間を過ごしていた。


 久しぶりの二人の時間ということで、私はなんだか一緒にいられることが本当にうれしくて、アシェル殿下の声が心地よくてたまらなかった。


「庭も薔薇が見ごろでして、後ほど一緒に散歩しましょう」

『ふふふ~。エレノアと久しぶりにのんびりできるぞぉ~。わぁ。なんかうれしいなぁー』


「はい。王城の薔薇は本当に見事ですものね」


「えぇ。あぁ、新種の薔薇も手に入れたのでそれもご紹介します」

『新種の薔薇、エレノアの名前を付けたいとか思っている僕。少し気持ち悪いかな。え、どうしよう。引かれるかな? うーむ。考えものだ』


 アシェル殿下と一緒に過ごしていると感じるのが、アシェル殿下が私の外見ばかりを見ないという点である。


 ほとんどの人は、私の外見ばかりに目がいって、内面を見ようとしない。


 けれどアシェル殿下は違う。


 一緒に過ごして、同じ記憶を共有しようとしてくれたり、私のことを考えてくれる。


 その時間がとても心地が良かった。


 しかし、その時間が突然、打ち砕かれることになるなんて、この時の私は思ってもみなかった。


 一緒に庭を散歩に行こうとした時であった。


 庭の方が騒がしくなったかと思うと、庭の方から走ってくるような足音が聞こえ、アシェル殿下が私をかばうように前に立った。


 すると、生垣から一人の少女が飛び出したのである。


「アシェル様!」


 ふわりときらめくピンクブロンドの髪と、くりくりの大きな栗色の瞳。


 その姿に、私は息をのんだ。


「チェルシー嬢……?」

『なぜここに?』


 ヒロインである。


 目の前にヒロインが現れた。


 私は心臓がバクバクとなるのを感じながら、ヒロインを見つめていると、ヒロインは私の姿を見て、かわいらしく笑っていった。


「こんにちはぁ~。アシェル様のお友達ですかぁ?」

『働かない悪役令嬢が。ふふふん! ここからはやっと私のターンだわぁ。ここまで大変だったけれど、これからはみんなを私のものにしてあげるんだからぁ~』


 背中に嫌な汗が伝っていく。


 これはあれである。


 ヒロイン様も、転生者である。


 しかもおそらく自分よりもよく内容などを覚えているであろう雰囲気に、私はこのままではアシェル殿下が取られてしまうと焦燥感にかられる。


 取られたくない。


 私は思わず、アシェル殿下の腕をぎゅっと抱きしめた。


『え? 何? エレノア、何それ? えぇぇ。かわよ。やばい。なんだろう。僕今幸せすぎる』


『は? 引っ付くなよ悪役令嬢。アシェル様が嫌がってんじゃん』


 アシェル殿下の心の声には、照れてしまうが、ヒロインチェルシー様の声には恐怖してしまう。


 私はこれからどうなるのだろうかと不安に思った。


読んでくださり感謝!感謝!です!

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― 新着の感想 ―
[一言] すとーんって石じゃなくて… 最初分からなかった~(笑)
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