二十四話 束の間
私が目覚めたのは事件から丸一日たった後であり、アシェル殿下とは身を清めてから会うこととなった。
両親は建前上は私のことを心配し、抱きしめてくれたがそれだけである。
心の中は私に対しての陰湿な言葉で溢れてれており、私はそれをただ聞き流す。
『もしこれで婚約破棄となったらどうするのだ!』
『純潔が疑われるかもしれないわ』
頭の中でずっとそんなことを考えている両親ではあったが、そんな私の足元には三人の獣人の子どもたちがべったりと張り付いて、両親に向かって唸り声をあげている。
どうやらリク、カイ、クウは私と離れるのを嫌がったため、騎士の監視の元、私の傍にいられるようにアシェル殿下が配慮してくれたらしい。
今では三人とも小奇麗になり、かわいらしい短パン姿がよく似合う。
両親は獣人の子どもを忌避するような顔を浮かべたが、アシェル殿下の口添えを無下にすることはできず、表面上は受け入れてくれている。
「今から私は殿下と話があるので、三人は部屋で待っていてくれる?」
「「「わかった」」」
何故懐かれたのかはわからないが、三人は素直にうなずくと、部屋へと戻っていく。
そして、アシェル殿下が客間へと訪れ、私は思わず駆け寄ると、笑顔で出迎えた。
「アシェル殿下、助けていただき、ありがとうございます」
すぐに笑顔が返ってくると思っていた私だったけれど、アシェル殿下の表情は暗く、私のことをぎゅっと抱きしめると、小さな声で呟くように言った。
「怖い思いをさせてしまいました。すみません」
『せっかくのデートだったのに、ごめん。怖かっただろうに、本当に、ごめん』
私は首を横に振った。
「大丈夫です。だって、殿下が助けに来てくださると、私は信じていました」
そう伝えると、アシェル殿下の抱きしめる腕が強くなる。
心臓の音が聞こえた。
『変な女を中心に、おかしな事件が起こっている。くそぉ。エレノアを巻き込んで、絶対に許さないんだからな』
その言葉に、私の頭の中は冷静になり、私は、しっかりと状況を整理しなければと決意を固めた。
「アシェル殿下、何があったのか、教えていただけますか?」
「あぁ」
アシェル殿下はその後、エレノアの横に腰掛けると、静かにエレノアが攫われたれた時のことと、その後について話し始めた。
簡単に要約すると、襲撃され、アシェル殿下をかばった女性は現在医療機関で検査入院中だということであった。ただし、何かしら裏がありそうだと、現在調査中であるとのことである。
私はとらわれていた時に聞こえた声についてや、状況について話をした。
『お嬢? 頭? うん。やはり何かしらの組織が動いていたんだな。それにしても何故獣人とエレノアを一緒の部屋に? どういうことだ?』
考え始めたアシェル殿下に、私はノアについて尋ねた。
「あの、一緒に逃げた男性はどうなりましたか?」
そういった瞬間、アシェル殿下の眉間にしわが寄った。
『……王城の地下牢に入れているとは……エレノアには言えないよ……どうしよう』
何故ノアが? 私はアシェル殿下が話してくれるのを待った。
頑張って書いた小説が、たくさんの人に読んでもらえることはとても嬉しいことだなぁと思います。
ありがとうございます。