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二十一話 脱出

『人間なんて信じるもんか』


『信じれないよぉ』


『きれいなひとでも、しんじられない』


 三人の心の声を聴きながら、私は静かに言った。


「私を利用すればいい。外に出たら、私のことは気にせずに逃げていいわ。でも、もし私と一緒に逃げる気があるなら、私は外に逃げた後も、貴方達の助けになれると思う」


 その言葉に、三人はしばらく私のことをじっと見つめた後に、三人でこそこそと話しはじめた。


 私はその間に、外の男達の心の声を読み、脱出経路や脱出方法について考えていた。


「協力する……一緒に、逃げる」

『脱出まで利用してやる』


『一緒に逃げたいよぉ。もうここはいやだぁ』


『いく』


 私はうなずき、そして計画を口にする。


「外の見張りの男を、私が部屋に誘い込むわ。誘い込んだら、男を倒したいのだけれど、できる?」


「そんなの簡単だ。今は首輪だけだからな」

『首輪の持ち主が来たら……この首輪の仕掛で痛むだろうが、あいつが来ていなければ大丈夫なはずだ』


 その言葉に私はなるほど、首輪はそのためなのかと理解する。


「いいわ。じゃあ作戦を話すわよ」


「あぁ」


 獣人の子ども達の名前は、一番の年長者がリク。二番目がカイ。三番目がクウというらしい。


 三人に私は作戦を説明し終えると、三人はなんとも言えない表情を浮かべた。


『『『えーーー』』』


 心の中でブーイングのような言葉を発する三人に、私は今はこれしか方法がないのだとどうにか説明をし、どうにか、三人の賛同を得るのであった。




 真夜中。男達が静かになり、一人の見張りと鳴った時間帯に、私達は行動を開始する。


「はぁ、はぁ、はぁ……ねぇ、そこに誰かいないの?」


 扉の外で見張りをしていた男は、部屋の中から聞こえる艶めかしい息遣いに、ごくりと生唾を飲みこみながら、聞き耳を立てる。


「なっ……なんだ」


 声の主の少女を思いだし、男はさらに唾を飲み込むと、艶めかしい少女の裸体を想像する。


「ねぇ……こんな獣人の子達じゃ、楽しめないわ。もっと、逞しい男の人じゃないと」


「なっ!?」


 見張りの男の脳内はすでに言葉には出来ないお花畑である。先ほどから妙に艶めかしい声が聞えはじめたと思ったらお誘いの言葉である。


「じゅ、獣人の子どもはどうしたんだ!?」


「ふふっ……えぇ? どうなってるかって、見て見たらどう? ほら、扉を開けて、一緒に楽しみましょうよ」


 男はつばを飲み込み、見張り用の小窓に手を伸ばす。そして小さな小窓を開けて中を見て、目を見開いた。


 少女の衣服ははだけ、そんな少女に心酔するように惚けた表情を向けて、両手にキスをする獣人の子ども達の姿がある。


 白い肌が艶めかしく、少女の瞳を見れば、飲みこまれる。


 見張りの男は生唾をまたごくりと飲み込むと、獣人の子どもは首輪をつけているから大丈夫だと、女一人ならば自分の相手ではないと高をくくると、鍵を使って扉をがちゃりと開けた。


「そうだよな。子どもじゃ、満足できないよな! うんうん。満足させてやっ」


 次の瞬間、扉の後ろに隠れていたリクに後ろから首後ろを手刀で殴られ、男は意識を失った。


 あまりに一瞬のことで私は驚いた。そして慌てて衣服を整えると、恥ずかしくて一度両手で顔を覆った。


『女ってこえー』


『心臓がばくばくするよぉ』


『ひゃあぁ』


 私は、恥ずかしくってもとにかく脱出する方が優先だと、顔を上げたのであった。



 

皆がハリーを求めている。ハリー!早く出番がくるといいね!


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