表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/176

二十話 獣人の子ども達

 体の痛みと、ざわつく様な心の声で、私は目を開いた。


『あ、起きたぞ』


『わぁ~。綺麗な人間だなぁ』


『かわいちょう……』


 奴隷と言う言葉に、私はがばりと体を起き上がらせて、そして頭の痛みを感じて手で押さえた。


『馬鹿だな。いきなり飛び起きたらそりゃあ、痛いだろうよ……』


『どんな声なのかなぁ』


『かわいちょう~』


 そこは小さな部屋の中であり、三つの檻が並んでいる。そしてその中には、赤色の瞳の、耳と尻尾の生えた獣人の子どもが入れられていた。


 私は目を丸くして、じっと檻の中の子ども達を見つめる。


 見覚えがあった。


 悪役令嬢エレノアが侍らせていた三人の幼い従者と同じ外見であり、悪役令嬢のエレノアは彼らに首輪をはめて楽しそうにしていた。


 私は緊張しながら、辺りをきょろきょろと見回し、扉の方へと行くと、開かないか、ドアノブをガチャガチャと鳴らす。


「開かないわよね……」


 私はため息をつくと、檻の中の三人へと視線を向ける。


『逃げるつもりなのか?』


『無理だよぉ~』


『かわいちょうな人らなぁ』


 何故この三人と同じ部屋に入れられたのだろうかと思っていると、部屋の外から男達の声が聞えてきた。


 頭の中の声は私のことをいやらしい目で見て、興奮しているようだったので聞こえないふりを決め込む。


「お嬢の命令だが、大丈夫なのか?」


「綺麗な女なのに、俺達が相手が出来ないなんてなぁ」


 一体何だろうかと思っていると、続いた言葉に、私はびくりと肩を震わせる。


「獣人の鍵は開けてある。そのままにしていたら獣人に殺されるんじゃないか?」


「凶暴だからなぁ。綺麗な女をそのまま殺すのはもったいないが、命令だから仕方がねーよ」


「獣人の遊び道具ってことか?」


「そういうことだろう? 獣人も血に飢えている頃だろうしな」


 私は思わずばっと獣人の方を振り返り、身構える。


 そんな狂暴なのだろうかと思って、襲われないかどうか見定めていると、心の声が聞えはじめる。


『血に飢えるって……俺達は獣じゃねぇ』


『ふふっ。襲わないよぉ。僕達、野蛮な人間じゃないもん』


『ばからなぁ』


 私はほっと胸をなでおろすと、獣人の檻の方へと歩み寄り、檻の中を覗き込んだ。


 すると、三人はそれぞれ首輪をはめられており、私は眉間にしわを寄せてしまう。


「あの……大丈夫? けがはない?」


 思わずそう尋ねると、三人は驚いたように小首を傾げ、そして一番年長であろう少年が口を開いた。


「俺達にかかわるな」

『可愛そうだけど、俺達には助けてあげることは出来ない。だから、関わらない方がいい』


 絶対に自分達は救われない、そんな瞳の色を三人はしており、私は胸が痛くなった。


 けれど、ゆっくりはしていられない。


 男達の考えがいつかわるかは分からないし、自分達がいつどうなるかなど分からない。一刻でも早く逃げなくてはいけない。


 私は意を決すると言った。


「一緒に逃げましょう」


 獣人の子ども達は、目を見開くと、私の言葉に固まった。




 


獣人の子どもたち。きっと可愛いでしょうねぇ~。

いつも読んでくださりありがとうございます!嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズはこちらから

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
小説版のサイトはこちらから

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
― 新着の感想 ―
この手の作品て、転生者の主人公が極悪人なのはデフォなのか。
[気になる点] > 奴隷と言う言葉に、私はがばりと体を起き上がらせて、そして頭の痛みを感じて手で押さえた。 直前に奴隷という文字が見当たらず、唐突感がありました。 [一言] 楽しく拝読しております…
[良い点] かわいちょう に心を鷲掴みされました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ