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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第五章

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9話

 ひざ掛けを二人にかけ、あどけない姿で眠る姿を見つめる。


「あまり、未来の情報は聞かないようにしよう。何が起こるか分からないからさ」


「そうですね。……二人ともきっと、不安でしょうに、元気に振舞う姿が健気です」


 アシェル殿下もうなずいた時、エル様が姿を現した。


 その表情は険しく、私の横に座ると大きくため息をついた。


「……ユグドラシルがどこにいるか、はっきりと分かったぞ」

『はあぁぁ。厄介だ』


 大きくエル様はため息をつくと、地図を開き、それを私達に見せながら位置を指さした。


 それは先程聞いた位置と少しずれる。


「詳しく妖精に聞いてきたのだ。その場に私も飛ぼうとしたのだが、何らかの妨害がありその位置に飛んでいけないのだ」

『飛べないということは、ここに何かがあるということだ』


 どういうことなのだろうか。


 ユグドラシル様はそして無事なのだろうか。


「エル様。この位置であれば、一週間後に到着予定地の近くです。私達もいける場所ですか?」


 尋ねると、エル様は眉間にしわを寄せた。


「行けるが、何があるか分からない」

『何かがいるのは確かだ』


 それでもユグドラシル様が困っているかもしれない。


 それに何より、ユグドラシル様がいなければこの子達が帰れない。


 きっと未来で私とシェル殿下も心配していることだろう。


「エレノア。しっかりと準備をして、騎士を伴って行こう」


 その言葉に、私はうなずく。


「はい」


 行くことを決めている私達に、エル様は仕方ないなぁというように笑みを浮かべると言った。


「わかった。実は他の妖精達も心配していて、来たいと言ったのだが、一応待ってもらっている。あ奴らは、人間の言葉を聞かないことが多いからな。一緒に来たら大変だ」

『気持ちは分かるが、面倒な奴らだ』


 たしかに妖精達が来たらかなり大変なことになるだろう。


 収集が付くものが付かなくなる可能性すらある。


「そうですね。エル様、ありがとうございます」


「いや。ではそれまでの間に私は情報収集へ行ってくる。アシェル。エレノアを頼むぞ」

『しっかりと守れよ』


「もちろん」

『ちゃんと守るよ。絶対にね』


 頼もしいアシェル殿下の言葉に、私は笑みを浮かべるとエル様は私の頭を撫でてから姿を消した。


 ユグドラシル様が無事でありますようにと私は願ったのであった。


 それからは馬車移動が続き、私とアシェル殿下も途中で仮眠を挟みながら揺れに身をゆだねたのであった。


 それから私達は何度かの休憩を挟みながら、魔術具によるポータルを通り移動もし、一泊する予定の街までつくと、すぐに予定されていた宿屋に入ったのであった。


 休憩を挟んだ後に、子ども達には部屋で待っているように伝え、私とアシェル殿下は街を治める領主へと挨拶へと向かう。


 以前、この街には領主との会合も含めた視察に来たこともある為、領主との会合は早々に私達は領主の案内の元、街の視察へと向かったのであった。


 街の視察には子ども達も同席してよいとの許可をもらい、そこからはアニスとルイスも共に移動をしていくこととなった。


 するとアニスとルイスがこっそりと小さな声で私に尋ねた。


「本当に私達もついていっていいの?」


「迷惑じゃない?」


 そのこちらを伺うような姿に、私はうなずくと答えた。


「宿屋で部屋にこもっていてもつまらないでしょう? でも……二人が、心の声が聞こえるということで、何か気持ち悪くなったり、不安になったりしたら教えて頂戴」


 二人は少し驚いたような顔をして、それから言った。


「ごめんなさい。そうだ、忘れていた」


「うん。僕も」


「どうしたの?」


 なんだろうかと思っていると、私の手をぎゅっとアニスとルイスは握る。


「前に、お母様と、心の声について尋ねて話をしたことがあるの。そこで、お母様、実は不安だったことを私達に話してくれたのよ」


「うん……あの、えっと、……エレノア様。僕達、たしかに色々あったけど、今ではぜーんぜん、平気だからね」


「そうよ。ハリーに鍛えられたもの」


「うん。ハリーがね、それは僕達の才能なんだから伸ばして伸ばして利用しろって」


「だから、私達へっちゃらなの」


 ハリー様らしいと思いつつも、本当にそれでいいのだろうかという不安を抱く。


「あの……無理はしていない?」


 子ども達には、無理してほしくない。


 私は幼い頃、辛くて辛くて仕方がなかった。


 心の声なんて聞きたくなかった。


 すると二人は小声でにっと笑いながらうなずいた。


「ぜーんぜん。むしろ才能だって思っているわ」


「そうだよ。王族として、人の心把握できる方が絶対にいいしね」


 頼もしいその言葉に、あぁそうかと思った。


 私とは違い、二人は生まれながらにして王族なのだ。


 アシェル殿下の姿勢によく似ている。やはり、親子なのだなと思った。


 本当に……私と、アシェル殿下との子どもなのだ。


「ふふふ。よかった。実は不安だったの」


 そう告げると、二人は私の手をぎゅと握る。


 なので安心させるように私は言った。


「ありがとう。教えてくれて。さぁ、今日は街をたくさん見て回るわ。せっかくだから二人も楽しんでね」


「「はい!」」


 先を、領主に説明を聞きながら歩くアシェル殿下。


 私達はその後ろをついていく形となった。


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