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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第四章

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19話

 レガーノ様は胸ポケットから地図を取り出すとそれを広げた。


「ここが現在位置。魔法を使うと気づかれる可能性がある。出来るだけ魔法は使わずに脱出するぞ」

『はぁぁ。面倒くさいな。だが、屋敷のいたるところに魔法封じがされている。これでは使いたくても使えんな』


 非魔力保持者達の住む場所だから、恐らく魔法を使える者達の襲撃を恐れて対策もされているのであろう。


 私は無事に逃げ出すことが出来るだろうかと思っていると、メローナ様が言った。


「わ……私、ここに残ります」

『その方がいいわ。私がいては足手まといになる』


 その言葉いレガーノ様は眉間にしわを寄せると声を上げた。


「置いていくわけがないだろう。助けに来たのに置いていくやつがあるか」

『可愛いメローナを置いていくわけがないだろう』


 顔と心の声が全く一致していないなと私は思いながら、メローナ様に優しく声をかける。


「メローナ様。一緒に行きましょう。もしメローナ様が残ると言うならば、私もここに残ります」


「え、エレノア様! それはダメです」

『そんなのだめに決まっている! ……エレノア様には安全な場所にいてほしい』


「ふふふ。だから一緒に行きましょう」


 私がそう言うと、メローナ様は小さくこくりとうなずいた。


「はぁぁ。じゃあ担ぐぞ。お前達は大人しく担がれてろ。その方が早い」

『メローナを抱っこできるなんて、今までなかったからな』


 レガーノ様がメローナ様の方へと一歩歩み寄ると、すごい勢いで私の後ろへとメローナ様は回り込むと言った。


「い、嫌です」

『お兄様に担がれるなんて! そんなの、そんなの無理だわ!』


「メローナ? おいおい。担ぐだけだ。その方が早いから」

『嘘だろ……だっこ、出来ると思ったのに』


「む、無理です! あ、アシェル様がいいです!」

『お兄様に抱っこだなんて! わわわわ私! 絶対に無理だわ!』


 メローナ様は慌てた様子で私の後ろから今度はアシェル様の後ろへと移動をすると、その腕にしがみき、縋るような声を出した。


「お、お願いします。アシェル様。お、重たいかもしれませんが、ど、どうか!」

『無理なんです。お兄様には、無理なんです』


『ちょっと待てよ……まさか……俺は、メローナに嫌われているのか? はは……いや、そんなまさか……』


 衝撃を受けるレガーノ様の声に、少しばかり同情していると、アシェル様は困ったような表情を浮かべたのちに、一瞬だけ、心の声が聞こえる。


『……エレノアを、他の男に抱えさせるのは……うぅぅ。僕って心が狭い……あ』


 それからアシェル様の心の声はまた聞こえなくなる。


 おそらくだけれど、アシェル様は意図的に心の声を聞こえないようにしているのだと思う。


「レガーノ。とにかく今は急いだほうがいい。私がメローナ様を抱えるぞ」


「あ、あぁ。分かった……エレノア嬢。こっちへ」

『はぁぁぁ。王城に帰ったらメローナに好かれるために努力しなければ』


 私は自分でも走れるのになぁと思うけれど、レガーノ様に軽々と抱きかかえられてしまう。


 一度押さえつけられたことがあることも相成って、少しだけ体が強張ってしまう。


 アシェル様とレガーノ様は、私達を抱きかかえたまま、廊下を走り抜け、その後、レガーノ様を先頭に秘密の通路の方へと移ると、薄暗い階段を走っておりていく。


 あまりに早いその足取りに、私はレガーノ様にしがみつく他ない。


『ある程度大きな屋敷になれば、そりゃあ隠し通路もあるっていう物だ。さぁ、後は一度地上へと出て、逃げきれるか』


 レガーノ様の言葉に、私はしがみついている場合ではないと気持ちを律すると、周辺に人がいないか、心の声が聞こえてこないか探っていく。


 この地下の隠し通路には誰もいないのだろう。


 心の声も静かなものであった。


 ただし、遠くの方から聞こえてくる地上の方からは、私達が逃げ出したことに誰かが気づいたのだろう。


 騒がしい人の声が聞こえ始めた。


 ただ、私達が地下の方へといることは気づいていない様子であった。


 このままであれば逃げ切れるかもしれない。


 私はそう思うと、レガーノ様が呟いた。


「落とさないから、そんなに緊張するな」

『力が入っていると運びにくい』


 その言葉に、私は慌てて力をどうにか抜こうとするが上手くいかない。


「す、すみません」


「いや、こちらこそすまなかったな……エレノア嬢は、アシェルの方がよかっただろう」

『そりゃあそうだよな……』


 どうしてアシェルの方がよかったと言う言葉に繋がるのか。


 やはり、私の感じた感覚は正しいのかもしれない。


 私は、アシェル様を知っている。


 そう仮定した時に、では何故覚えていないのかという疑問に行き着く。


 一体、私の身に何が起こっているのであろうか。


 その時、道の先の方が、心の声が騒がしく聞こえる場所があることに私は気がついたのであった。



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