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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第四章

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18話

「……メローナ様……気持ちは分かります。ですが……では、魔力を持っていない、私達は……どうすればいいのですか。とにかく、メローナ様が分かってくれるまで待ちます」

『わかってくれるはずだ』


 メローナ様は何度も、何度も首を横に振る。


「いいえ、いいえ! 私の考えは、絶対に変わりません!」

『変わらない! 変わるわけないわ』


 ジョバンニはメローナ様の言葉に大きくため息をつくと女性と共に部屋を出て行く。


 鍵がかけられた音が響き、私達は息をついた。


 メローナ様はうつむいたまま動かず、私はそんなメローナ様の背中を優しく擦っていると、アシェル様は上着を脱ぎ、それからシャツの袖をまくると、窓の外を見た。


「エレノア嬢。先ほどの男性はどのようなことを考えていたか、教えてもらえますか?」


 その言葉に私はハッと顔をあげる。


 やはり私の能力を知っているのだ。


「アシェル様……どうして、どうして知っているのですか?」


 私の問いかけに、アシェル様は困ったように微笑むと、私の元へと来て、私の手を取るとぎゅっと握った。


 突然のことに驚くけれど、握られた手の温かさを、私は知っているような気がした。


 そして、男性に触れられることに対して、こんなにも嫌ではない、むしろ心地よく感じたのは初めてであった。


「何故……どうして……私は……待ってください、私達は……」


 顔を上げてアシェル様を見ると、今にも泣きそうな表情を浮かべながら、それでも私に気を遣わせまいとするように微笑みを浮かべる。


「大丈夫です。大丈夫。エレノアは僕が守るからね」


 優しい声。


 何故かすごく泣きたくなった。


 この人を、私は知っている。絶対にこの人のことを私は知っているのに……


「なんで……私」


 涙が溢れてきて、そんな私の涙をアシェル様は指で拭うと、苦笑を浮かべる。


「ハンカチ……持ってなくて……泣かないで。君が泣くと、僕はどうしようもなくなるんだ」


「アシェル……様……」


「ふふふ。ごめん。王子様でいようと思ったんだけれど、地がでちゃったよ」


 可愛らしい雰囲気のアシェル様は、王子様のように常に気を張っていた時よりも柔らかな雰囲気で、私はこちらのほうがいいなと感じた。


 そして、不思議なことに男性だけれどアシェル様の傍はとても居心地がいいのだ。


 レガーノ様に触れられた時は、怖いと思ったのに、アシェル様は全く怖くない。


「むぅ……はぁぁ。泣いている君を抱きしめたくなるよ。でも、我慢だね」


 アシェル様は笑い、そして立ちあがると言った。


「エレノア。今は僕に力を貸して。色々と戸惑うだろうけれど、後で説明をちゃんとするからね。さぁ! 周辺を把握した後にどうやって逃げ出すか考えよう」


 アシェル殿下に手を刺し伸ばされ、私は立ちあがる。


 握られた手はやはり嫌な感じはしなかった。


 不思議だなと思っていた時、部屋がノックされ、一体誰だろうかと思って身構えると、扉の鍵が開き、そして一人の深く帽子をかぶった男性が部屋へと入って来た。


 すらりとした身長の男性は、先ほどの男性達とは雰囲気がまるで違う。


 メローナ様は、驚いた顔で立ち上がると、声を上げた。


「お、お兄様!?」


 レガーノは帽子を脱ぐと髪をかき上げ、それから笑みを浮かべた。


「迎えに来たぞ。お姫様」


 そう言われたメローナ様は動きを止め、アシェル様が吹き出した。


「ぶっふふふふ。ちょっと、笑わせるなよ」


 レガーノは眉間にしわを寄せると腕を組んだ。


「なんだと。何故笑う。かっこよく登場しただろうが」


「いや。うん、来てくれてありがとう」


「あぁ。まぁ今回はこちらが巻き込んだようですまないな」


 その言葉にアシェル様はぴくりと眉を動かすと、レガーノ様の方をじっと見つめてから尋ねた。


「なるほど……そういうことか」


「一言で察するのはやめてほしいがな。とにかく謝罪は改めて行う。まずは逃げる算段を付けるぞ」

『魔法を使うと気づかれるからな……できれば気づかれないように出たいが……無理だろうなぁ』


 レガーノ様のことばに、メローナ様が尋ねた。


「な……なんでお兄様がこんなところに来たのですか?」

『私を助けに? そんな……そんなわけないわ。きっとアシェル様とエレノア様を助けにきたのね……』


 不安な様子のメローナ様の目の前までレガーノ様は歩み寄ると、その頭を大きな手で優しく撫でた。


 頭を撫でられたということにメローナ様は目を見開いてる。


「今まで、寂しい思いをさせてすまなかったな。だが、国王に私がなったからには、これまでの分も、お前を甘やかすつもりだ」

『すまなかったな』


 突然言われた言葉に理解が追い付かないのか、メローナ様は固まっていると、レガーノ様は何を思ったのか、メローナ様の頭を撫で続けている。


 そんな二人の様子にアシェル様はため息をついた。


「兄妹仲良くなることはいいことだな。だけれど、今は脱出したいんだけれど?」


 アシェル様の言葉にレガーノ様は肩をすくめる。


「感動のシーンだぞ?」

『さて、脱出しますかね』


「安全な所でしよう」


「ごもっとも」

『気合を入れるか』


 私達は脱出に向けて動き出したのであった。



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