十二話 ルーベルト殿下
ルーベルト殿下は侍女達に自分も参加することを伝えると、席を用意させ、アシェル殿下と私の間に座った。
そして見た目は可愛らしい少年のきらきらとした眩しい笑顔で、言った。
「兄上の婚約者であるエレノア義姉様と一緒に過ごせて嬉しいです。あ、そのうち義姉様になるので、この呼び方でもいいですか?」
『うっは~。やっぱり超美人~!ってか、でかっ!うっはぁ~』
頭の中でこんなことを考えているのかと、私は思いながら、やはり人とは外面だけでは分からないのだなと、私は思いつつ笑顔を返す。
「殿下がいいのであれば。私のことは好きにお呼び下さい」
ちらりとアシェル殿下に視線をやると、微笑を携えて言った。
「そうですね。いずれ結婚するのですし、いいのではないですか」
『こいつ~。っくそぉ。邪魔しに来たのはエレノア嬢が減るから嫌だけど、うん。義姉様か。うん。あー。結婚かぁ。エレノア嬢となら、幸せになれそうだなぁ~』
アシェル殿下の心の声が照れくさくなりながらも、結婚を楽しみにしてくれているのだなと嬉しくなった。
そんな私達の様子を見たルーベルト殿下は、にやにやとした笑みを浮かべながら目の前の紅茶を一口飲む。
『結構いい雰囲気じゃん。ふ~ん。うやらましいなぁ~』
私はその声に、心がうきうきとしだしたのだが、ここではっと思い直して気合をいれた。
せっかくのチャンスである。ここでルーベルト殿下がアシェル殿下の事を暗殺しようとしているのか、それを見定めておきたい。
「ルーベルト殿下も、今度の舞踏会に参加されるのですよね? 楽しみですね」
「ん? あー。そうですね! 義姉様も参加するのですよね。きっと綺麗でしょうねぇ」
『あー。舞踏会面倒だなぁ。兄上と一緒に、一掃する計画もあるし……あぁ、面倒。でも、義姉様のドレスは楽しみだなぁ』
「ふふ。褒めていただけるように頑張ります」
私の心の中は動揺の嵐である。
一掃する計画とはなんだろうかと思っていると、アシェル殿下の心の声が聞えてくる。
『僕、その舞踏会で毒を盛られる予定なんだよなぁ。あー、面倒くさいなぁ。けど、過激派を一掃しないと、後々面倒くさいしねぇ~。頑張ろう!』
それにまるで連動するようにルーベルト殿下も心の中で呟く。
『っていうか、本人認めてないのに、勝手に過激になって僕を支持するってやめてほしいよねぇ。僕はいずれハーレム作ってウハウハに暮らすのが夢なのにさぁ~』
私は目の前の紅茶の湯気を見つめ、そしてカップに手を伸ばすとゆっくりと口をつけた。
自分は心の声が聞えると言うのに、聞こえない殿下たちのほうが何枚も上手な様子である。
何となく、自分の役立たず感を感じながら、私は自分にできることを探すしかないなぁと、思うのであった。
『ぼん、きゅ、ぼーん』
ハリー様だけは、いつものように、頭の中が絶好調であった。
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