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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第三章

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十四話

 私はどうにかアシェル殿下から降ろしてもらおうと交渉したけれど、アシェル殿下は首を縦には降らなかった。


 こんなことは初めて驚きと、恥ずかしさと、ちょっと嬉しさを感じながら皆との話し合いが始まった。


 オリーティシア様はヴィクター様から少し距離を取ると口を開いた。


「話し合いの前に、精霊について教えてはくださらないのですか?」

『エレノア様が精霊を呼んだのは間違いないわ。情報が少ないわ。ジークフリートったら、本当に役立たずな弟だわ』


 私が答える前に、アシェル殿下が笑顔で答えた。


「その件については今回の件とは関係ありません。ですので、まずはこれからどうするかを話し合うべきではないでしょうか」

『精霊について話す必要はないよ。さてこれからどうするかが問題だ』


 アシェル殿下の言葉に、三人は押し黙った。


「あの、先ほど私には微かにレプラコーンのような声が聞こえたのです。かくれんぼは飽きたとかそういうことを呟いていたように聞こえました」


 本当は心の声が聞こえたのだけれど、微かに聞こえたという風にする。


 アシェル殿下は頷き周囲を見回してから言った。


「おそらく相手は遊んでいるのでしょうね。ですが、確実に指輪に近づいているのではないでしょうか。なのでこのまま探索に移りたいのですが、皆さんはどうお考えですか?」

『ノア殿やハリー、ジークフリート殿も心配しているだろうけれど、せっかくの機会だ。チャンスと考えて探索に移りたい』


 ヴィクター様はアシェル殿下の言葉にうなずく。


「そうだな。レプラコーンを捕まえて指輪のありかははっきりとさせるべきだ。だがノア殿達が心配するのではないか?」

『アシェル殿。やはり先ほど聞こえた声は錯覚か。今では凛々しくまさに完璧王子!』


 私はその言葉に手をあげた。

「精霊エル様に伝言をお願いしてみましょうか?」


 ここにいる皆にもうすでにエル様は認識されてしまっている。ならば、エル様に手伝ってもらった方がいいと私は考えて提案すると皆が同意した。


「そうしてもらえるなら、ありがたいですね」

『現段階ではそれしか方法がないか』


「精霊様を伝言に……ですが、そうですね……」

『見た目だけの女だと思っていたのに。っく……精霊と契約をしているの!? はぁぁ。精霊と契約をしている女性をサラン王国が手放すわけがない。アシェル殿下との婚姻を狙っていたけれど、難しいかしら……私の有用性を示せなければ……』


「お願いします」

『んだまぁ。精霊様……こんなの見てない。どういうことなのけ』


「あぁ。頼む」

『アシェル殿と語らい合いたいが、この状況では難しいな。はぁぁ。いつになったら語り合えるのだ。この筋肉を。この鍛え上げた肉体を』


 私は皆の同意が得られたところで、エル様を呼んだ。


「エル様」


 すると、姿を消していたエル様は風にのって現れ、周囲に目を向けることなく答えた。


「聞いていた。エレノアの位置と現在の状況について伝えればいいか?」


「はい。お願いできますか? すみません」


「良い。風に載せてそれを伝達しよう」


 そう言うとエル様は指先で風を作り、それを飛ばした。おそらくそれで伝わるのだろう。


「それよりも……危ない時にはもう少し早く呼ぶのだ」

『遅い。もっと早く呼ぶべきだ』


 エル様は私のことを心配そうに見つめると、髪を指ですくい、唇を落とした。そしてアシェル殿下の方へと無言で視線を向ける。


『守れ。そなたの唯一だろう』


 エル様はその後姿を消した。


アシェル殿下の手に力が入ったのを感じた。恐らく何かを思ったのだろうけれど、意図的に私に声を聞こえないようにしているのが分かった。


「アシェル殿下?」


 声をかけるといつもの優しい笑みが帰ってくる。


「大丈夫だよ。ちょっと自分を律しただけです。さぁ、では、探索へ移りましょう」

『気合を入れただけだよ』


 そう言うと、私達はこれから進むべき道を見つめた。


 視線の先には一つの洞窟があり、真っすぐに洞窟は続いている。そしてその中は暗いのではなく、地面に生えた苔が淡く光り、穴を照らしていた。


 明らかに誘っているようなその道に、一体どこへと誘われているのであろうかと思いながら進み始めたのであった。


苔の生えた光輝く洞窟を歩きたい(●´ω`●)

私はガラス細工とか、小瓶とか好きなんですよね。綺麗ですよねぇ~。

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