第9話 嫉妬と俺
女性の嫉妬は怖いものです。気をつけましょう。
爽やかな朝日が昇るころ、可憐な少女が寮の廊下を疾走していた。
シャルロッテside
今までリクトちゃんは屋敷の敷地内にいたため、朝起こしに行くことが出来なかった。
けれど今日からは違う。
しかもリクトちゃんは私と同じ首席合格だから階層も同じ⋯⋯これって神様が、私に起こしに行けって言っていると考えていいよね。
私は学園長の娘という権力を使って入手したマスターキーを使って、リクトちゃんの部屋の鍵を開ける。
部屋の内装は同じだから、どこでリクトちゃんが寝ているかすぐに特定ができる。
いた! 布団からリクトちゃんの頭が見える。
私は寝室のベットにゆっくりと近づき、そして一気に布団を捲り上げる。
「おっはよー! リ⋯⋯ク⋯⋯ト⋯⋯ちゃ⋯⋯ん⋯⋯」
布団の中にリクトは確かにいた⋯⋯けれど余計な不純物が2つもあり、しかも左右からリクトに抱きついている姿を見て、シャルロッテは思わず声が詰まってしまう。
リクトは昨夜二人に抱きつかれていたため眠れず、そしてトアとマリーも昨日は寝ているかのように見えたが、リクトと共にベットで横になる行為にドキドキして寝ることができなかった。その為リクトと同じ夢の中に入ったのは朝方であり、布団を剥がされても気づかない。
朝リクトを起すより、私も一緒に寝たかった⋯⋯そう思ったシャルロッテは悔しくて側にあった枕を手に取る。
「リクトちゃんのばかぁ!」
そして私は枕をリクトちゃんの顔に投げつけ、部屋を出ていく。
リクトside
「いてっ!」
寝ていた俺の顔に何かが当たり、俺は思わず目が覚める。
「ま、枕?」
何で枕が俺の顔に?
「⋯⋯どうしたの兄さん」
「ん⋯⋯もう朝ですか⋯⋯」
俺が起きたことで2人も目を覚まし、眠そうな顔で辺りを見渡す。
「もう少し寝かせてくださいよ⋯⋯」
トアはまだしもメイドのマリーが俺より遅くまで寝ているのはどうかと思う。俺はマリーの主人でいいんだよな?
「ほらマリー、もう起きないと⋯⋯朝だよ」
トアはベットから起き上がり、優しく⋯⋯と思ったら優しいのは声だけで、実際はおもいっきりマリーの肩を持ち揺さぶっていた。
「わ、わわ!」
「マリーが起きないと朝御飯準備する人がいないから早く起きて」
マリーはトアの揺さぶり攻撃によって、逆に意識が遠退いているんですけど。
「や、やめて下さいトア様~起きますから~」
目が覚めたことを確認してトアはマリーから手を離す。
「それじゃあ朝御飯よろしくね」
そう言って本人はまた布団にくるまり寝てしまった。
さすが我妹だな。いつも通りゴーイングマイウェイを貫いている。
マリーは目を擦りながら、立ち上がりその場で着替えようとしたため、俺は静止する。
「マリー⋯⋯着替えるなら向こうだ」
俺は非常に残念だが、寝ぼけているマリーと寝ているトアを置いて寝室を退出した。
それにしても昨日は暗くてよくわからなかったが、2人ともすごい格好だったな。
トアはショートパンツのパジャマで、その健康的に脚を惜しみなく出していたし、マリーに至ってはネグリジェで、胸元の谷間がおもいっきり見えていた。
やはり俺のことを男として見ていないのだろうか。もし俺に理性がなかったら、2人とも襲われても文句は言えないぞ。
その後俺はマリーとトアの姿を記憶に刻みながら、学園へ行くための準備を始めた。
「あれ?」
俺は部屋の外へ出るためドアを開けるが、鍵が掛かっていなかった。
「申し訳ありません。戸締まりは行ったと思っていたのですが⋯⋯」
その様子を見ていたマリーが直ぐ様頭を下げ、謝罪をしてくる。
珍しいなマリーがメイドの仕事でミスするなんて。
「昨日は引っ越しで疲れていたからしょうがないよ⋯⋯次は気をつけてくれよな」
「はい⋯⋯すみません」
「それじゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませリクト様」
「兄さんいってらっしゃい」
俺はマリーと眠そうなトアに見送られながら学園へと向かった。
「おはようリクトくん」
「昨日見てたよ」
「首席合格なんて凄いね」
今日は登校中も、教室に着いてからもやたらと声をかけられる。
おそらく昨日フェザー学園の入学試験でダンドを倒し、首席合格をしたからだと思うけど。
そしてダンドは負けたことでプライドが傷ついたのか、今日は登校していない。
まあ自分から負けたら不合格の条件を付けてあっさり敗北したら、ダンドじゃなくても恥ずかしくて学園に来ることは出来ないだろう。
「しかもリクトくんってシエテ家が後継人になっているんでしょ?」
「凄いね! 今度私にも戦い方を教えてほしいな」
「あっ! 私も!」
自分で言うのも何だが、凄い手のひら返しだな。
昨日までは空気みたいだとか、何を考えているかわからないみたいなことを言っていたのに⋯⋯。
正直な話、そんな人達の言うことなど聞きたくないため、俺は適当に相づちを打ち、教師が来るのを待つ。
ガラガラ
俺の願いが届いたのか、教室のドアが開く。
しかし教師が来たのかと思ったが、教室に入って来たのはフェザー学園の制服を着たシャル姉だった。
「お、おい⋯⋯あれってシャルロッテさんじゃないか」
「お姉様がなぜここに?」
「朝からシャルロッテさんに会えるなんて⋯⋯今日は良い日だ」
ど、どうしてシャル姉がここに⁉️ 魔法士の学園に行かなくてもいいのか?
「2度目の挨拶だけどおはようリクトちゃん」
2度目? どういうことだ?
「おはようございます⋯⋯シャルロッテさん」
さすがにこの衆人の前でシャル姉と呼ぶのは恥ずかしいので、シャルロッテさんと言うことにした。
俺の言葉を聞いてシャル姉は一瞬眉毛がピクッと上がる。
どうやらシャルロッテさんと呼ばれたことが、気にくわないらしい。けど俺のことも考えてくれ。さすがにシャル姉と呼ぶのは無理だ。
「昨日はフェザー学園の入学試験で大活躍だったね」
「ありがとうございます」
ん? けどそれって昨日も言われたよな?
「シャルロッテさん直々にお褒めの言葉をもらうなんて⋯⋯ちくしょうリクトの奴うらやましいぜ」
「やっぱりリクトくんって凄いのね⋯⋯今日私とデートしようよ」
「あっ! こら! 抜け駆けするなんてずるい!」
まさかのモテ期到来か! 前の世界でもこんなことはなかったので、さすがに少し嬉しく思う。
「⋯⋯リクトちゃんいいね⋯⋯モテモテで⋯⋯」
あっ? これは笑顔だが目が笑っていないというやつだ。
シャル姉が怒ってるぞ。
「けど節操がないのはお姉ちゃん関心しないなあ⋯⋯今朝も女の子2人を侍らせて寝てたみたいだし」
「「「「「えぇぇぇっ!」」」」」
シャル姉が暴露したことにより教室内が騒然となる。
「な、な、な、なんでそのことを⁉️」
そういえば学園に来る前に部屋の鍵が開いていたけどまさかシャル姉が⁉️
「おいリクト! どういうことだ!」
「昨日首席を取ったからって調子に乗ってるんじゃねえぞ!」
「リクトくんって手が早いんだ⋯⋯やっぱりデートの話はなしね」
先程までの俺を称えていた声は嘘のようになくなり、逆に非難の嵐が吹き荒れていた。
「シャル姉⋯⋯何でそんなことを言うんだよぉ」
「自分の胸に聞いてみなよ⁉️ リクトちゃんが悪いんだからね」
そう言ってシャル姉は教室から出ていってしまった。
「それじゃあ誰と朝を共にしたか教えてもらおうか」
クラスメート(特に男子)が目を血ばらせながら俺を問い詰めてくる。
これでもし妹のトアとメイドのマリーと言った日には殺されるかもしれん。特にトアは人気があるから絶対に口にする訳にはいかない。
「さあ!」
「さあさあ!」
こうして俺はフェザー学園の入試で首席を取ったのはいいが、シャル姉の暴走によってトアとマリーと一緒に寝たことを暴露され、教室の空気を悪くするのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
もし少しでも気に入って頂けたらブックマークやここより⬇️の評価【⭐⭐⭐⭐⭐】をして頂けると、更新の励みになります。
今後も精進致しますのでよろしくお願いします。