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第3話 クワトロ家当主と俺

権力は正しいことに使ってほしいです。

 さて、この眠り姫をここに寝かせておくわけにもいかない。自室のベットに運ばないとな。


「トア様は私が運びます」


 タイミング良く俺とトアのメイドであるマリーが部屋の外から現れる。


 マリーは俺の母に仕えていたメイドで、年は俺の3つ上になり、仕事はできるが年相応に遊び心があるので、たまにからかうようなことをしてくる。


「今のやり取りを見てたな?」

「とても楽しそう⋯⋯いえ、リクト様を取り合うため修羅場になっていたので、私が乱入して三つ巴になると困ると思いまして」

「そんなことにはならないよ」


 俺は冷静にマリーの問いに答える。


 取り乱したらそれこそ弄られるだけなので、一々反応しない。


「それじゃあトアを部屋まで頼む」

「かしこまりました」


 そう言ってトアをお姫様抱っこで部屋の外へと連れていく。


「あっ! それとご当主様がリクト様に書斎まで来るようにと仰っていました」

「当主が⁉️」

「はい」


 ひょっとしたらダンドから俺をここから追い出すように言われたのかも知れない。


「わかった⋯⋯すぐに行く」


 現当主のサリバンが俺を呼ぶことなど、この2年間両親が行方不明になった時以来だ。おそらく何か重要な話だろうから急ぎ屋敷の本館へと向かった。



 トントン


「リクトです」


 重厚なドアをノックし、相手の反応を伺うと直ぐ様返事が返ってくる。


「入れ」

「失礼します」


 許可を得たことで俺はドアを開けると、黒塗りの椅子に髭を生やし、鋭い目付きで、強者の風格を漂わせる1人の中年の男性が座っていた。


 俺は姿勢を正し、サリバンと対峙する。


「本日はどのような御用件でしょうか」


 鋭い眼光で俺を見ながら腕を組み、何か威圧するかのようにプレッシャーを部屋に撒き散らしている。さすがランキング11のことだけはあるな。

 正直ここにいると背筋が凍る思いをするので逸早く退散したいがそうもいかない。


「学園はどうだ」


 やはりダンドに何か言われたようだな。


「可もなく不可もないです」

「もう学園は卒業だが、今後はどうするのだ」

「魔法士の学園に行こうと思っています」

「魔法士? 空気と言われている奴が?」


 俺の学園での様子を知っているのか⋯⋯まあ当主が一声かければその程度の情報集めることは造作もないことだろう。


「父や母のように魔法士となってベルファイアを護ります」


 それが()()()()()()()()()()()()()()()()()


「クックック⋯⋯死んだ兄達のように魔法士になるだと?」

「父さんや母さんは死んでません」

「もう2年も帰って来ていない⋯⋯死んだに決まっているだろ」

「でも遺体は上がっていませんし死んだという証拠はありません⋯⋯」

「それならなぜ帰ってこない⋯⋯お前とトアは見捨てられたということか」

「ッ! それは⋯⋯」


 そんなことはない! と言いたいが父さんと母さんは防壁の外へ行ったっきりベルファイアに戻って来ていないのは事実だ。


「まあそのことはどうでもいい⋯⋯だが魔法士になることは許さん!」


 サリバンは怒りの感情を乗せて語りかけてくる。

 一瞬圧に怯みそうになるが、父さんや母さんがいないことをいいことに当主に居座ったこいつには絶対に負けたくないので、憎しみの心を胸に秘め持ち直す。


「な、なぜかお聞きしてもよろしいですか⋯⋯」

「それはクワトロ家の恥になるからだ。ナンバーズの家から落第者を出すわけにはいかん⋯⋯もしそれでも魔法士になるというのなら⋯⋯」

「家から出てもらう⋯⋯ですか」

「トアもまだ幼い⋯⋯そうなったら困るだろう」

「それなら魔法士の学園に入学できれば寮に入れるので問題ありません」


 魔法士の育成⋯⋯人類が生き残るために急務で行わなければならないため、その待遇は破格だ。

 加護を持つものが少ないことと魔物との戦いでいつ死んでもおかしくないため、様々な面で優遇されている。


「だから貴様が魔法士の学園に受かることはないと言っている! もし明日の試験を受けるというのならそのままこの家から出ていけ!」

「それはもう、()()()()()()()俺達はクワトロ家とは関係ないということですか?」

「そうだ」

「わかりました。明日この屋敷から出ていきます⋯⋯お話はそれだけですか?」

「あ、ああ」

「では失礼しました」


 俺が素直に家を出ることを了承するとは思っていなかったため、サリバンは呆気に取られていた。

 今までボロ家に追いやられたり、存在に扱われてきたから最後に驚きの表情が見れて少し胸がスッとしたぞ。


 俺は少し気分が晴れ、自分の部屋へと戻っていた。



 サリバンside


 なぜリクトはクワトロ家を出ることに未練がないのだ。兄達が戻るまではここにいたいと言ってくるものと思っていたが。

 だがまあいい⋯⋯リクトは問題ないが、トアが優れた魔法士であることは間違いない。これで将来トアにクワトロ家を乗っ取られることはなくなったのだ。

 兄達はいないしこれでクワトロ家は完全に俺の物になった。しかし念には念を入れて明日の魔法士の試験を⋯⋯。


 そしてその後書斎では、サリバンの笑い声がいつまでも辺りに響き渡っていた。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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