第11話 修羅場と俺
修羅場を切り抜ける方法を主人公は知りたがってます。
「さて、もう遅いし夜道は危険だから送るよ、シルヴィアさん」
「はっ⁉️ 兄さん何を誤魔化そうとしているのですか?」
「私達だってか弱い乙女なんですけど!」
場を和まそうとジョークを言ったけど、火に油どころか火にガソリンを撒いてしまった。
けどランキング三桁のシャル姉と圧倒的魔力で全てを凍らせるトアがか弱いって⋯⋯。
「リクトちゃん何か言いたそうだね」
「いえ何も⋯⋯」
ここで余計なことを言うとさらに厳しい立場に追い込まれそうだから黙ってよう。
「それで⋯⋯2人はどういう関係なの?」
「先程の人達は、恋人とかあり得ないことを言ってたけど」
シャル姉とトアの言葉に俺とシルヴィアさんは答えることができない。
シルヴィアさんは恥ずかしくて言えないと思うし、俺がもし「シルヴィアさんはノーブラ、ノーパンの変態娘だということを知っちゃった関係」と言っても、たぶん信じてもらえず変態扱いされることは間違いないだろう。
「べ、別に俺とシルヴィアさんがどんな関係でもいいだろ?」
「良くないよ。私はリクトちゃんの後見人であるシエテ家の代表として、知る権利があります。もし変な人とお付き合いしていたら、シエテ家として看過できませんから」
「私は兄さんの妹ですよ。兄さんは家族に言えないような方と付き合っているのですか」
2人は正論っぽいことを言ってるが、ただ自分が知りたいだけだろう。と口に出しかけたが、何とか堪える。
「え~と、シルヴィアさん? でいいかしら? 貴女はリクトちゃんとどういう関係なの?」
シャル姉は尋問の矛先を俺からシルヴィアさんに代える。
正直俺から答えれることはないから、できればシルヴィアさんに言い訳を考えてもらいたい。
「そ、その⋯⋯」
「その?」
「ハッキリ言っていいですよ? 兄さんに下着を見られて脅されたと⋯⋯私も見られたこと何回もあるし⋯⋯」
おいこら妹よ! 君は兄さんを何だと思ってるんだ!
けれど微妙に内容が近いことから、トアの直感に戦慄を覚える。
「リクトちゃんはそんなエッチな子じゃないよ。きっと何か困ってることがあって、リクトちゃんに相談しているだけだよね? シルヴィアさん」
そしてこっちの自称姉は見当違いのことを言ってくる。それとあなたの弟はエッチな子ですから。
「じ、実は⋯⋯」
言うのか? 自分はノーパンノーブラですと。
そんなことを考えていたらシルヴィアさんは、俺の思っていたことより斜め上のことを言葉にした。
「わ、私がリクトくんに一目惚れしてしまいまして⋯⋯恋人になって下さいとお願いしたのです」
「「「えっ⁉️」」」
こ⋯⋯い⋯⋯び⋯⋯と⋯⋯?
「「「えーっ!」」」
そ、そ、そ、そんなこと言われてないぞ。
「ですから告白したことが2人の秘密で、出来れば誰もいない所でゆっくりお話したいなと思って」
一瞬なんのことかさっぱりわからなくて驚いてしまったけど、これはシャル姉とトアの追及を逃れるための嘘だ。確かにこれならさっきクラスメート達が言っていたことと辻褄が合う。
「シ、シルヴィア先輩⁉️ やめた方がいいですよ。兄さんはいつも私のお風呂を覗こうとする変態ですから。付き合ったらどんなプレイをさせられるかわかりませんよ」
さっきから聞いてるとトアはどうしても俺を変態不審者にしたいらしい。
お兄ちゃんは悲しいよ。
「た、確かにリクトちゃんはかっこよくて、頭も良くて、優しくて、強いけど、お姉ちゃんもやめた方がいいと思うよ」
シャル姉の今言った要素だと、どう考えてもやめない方が良さそうだけどな。
「ただまだ返事はもらえてなくて⋯⋯シャルロッテさん、トアちゃん⋯⋯少し二人っきりになりたいのですが、よろしいでしょうか?」
「わ、わかりました」
「兄さん! 早く帰ってこないと夜ご飯ありませんからね」
さすがに乙女の恋路を邪魔することはしないようで、こちらの方を気にしつつ、シャル姉とトアは医務室から出ていった。
それとトアよ。夜ご飯を作っているのはお前じゃなくてマリーだからな。
「ふう⋯⋯」
シルヴィアさんは、二人っきりになるための作戦が上手くいったことで、安堵のため息をつく。
「リクトさんすみません。告白だなんて変なことを言ってしまい⋯⋯」
「それは仕方ないかと⋯⋯ちょっと⋯⋯いえ、かなりドキドキしたけど⋯⋯」
「本当ですか⁉️」
シルヴィアさんが少し顔を赤くして、恥じらいながら答える姿に俺は、不覚にもドキッとした。
「そ、それで話って、何ですか?」
俺は自分の照れた姿を誤魔化すように、本題を振る。
シルヴィアさんが話したいことは何か、それともただ2人っきりになって始末するための口実だったのか。俺は警戒しながらシルヴィアさんの言葉に耳を傾けるのであった。
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