第9話 学園長と戦う俺(2)
ラスボスが弱いはずありません。
神具⋯⋯加護を極めた者が召喚できる武器。その力を手にすると魔力が数倍に跳ね上がり、唯一無二の特殊能力を使うことができる。
「さあ、遊びの時間はもう終わりだ」
ち、ちくしょう! 俺が言いたいセリフを口にしやがって!
「いくぞ」
学園長がクラウ・ソラスを天にかかげると、白く輝く剣が空中に現れる。
1本、2本、3本⋯⋯まだ増えていく。
40、50、60⋯⋯もう数えることもできない。
そしておよそ100本以上の剣が俺の方を向いている。
この無数の剣を生み出すことから、学園長の2つ名は無限の剣聖と言われ、幾つもの魔物を討ち滅ぼしてきた。
「さあ、眼前の敵を殲滅せよ」
て、敵って! しかも殲滅⁉️⋯⋯完全に俺を殺す気だこの人は!
しかしそんなつっこんでいる暇はなく、学園長が召喚した剣が猛スピードでこちらに飛んで来る。
「死んでたまるか! 魔を退ける神の楯よ、汝の力を我が身に宿し、全ての理をねじ曲げろ⋯⋯【守護の楯】!」
詠唱付きで絶対防御の【守護の楯】を展開する。
生半可なものでは学園長の攻撃を防ぎきることはできないと判断したからだ。
クラウ・ソラスが生み出した輝く剣が【守護の楯】に衝突すると、キンキンっと甲高い音が辺りに鳴り響く。
こ、これは想像以上に怖いぞ!
【守護の楯】は透明の楯だから、剣が飛んで来る様子がハッキリとわかる。
実はもしここに空気の楯がなかったら? 俺は光輝く剣に串刺しにされることは間違いないないだろう。
いや! 今はこの剣の嵐を防ぐことだけを考えろ!
しかし俺にはわかってしまった。
絶対防御の楯である【守護の楯】が徐々に光輝く剣に削られていることを。
魔力を注ぐことによって削られた部分を修復しているが、少なくともクラウ・ソラスから放たれる剣は、空気の楯を傷つけることができるということだ。
今、学園長が召喚している剣はなんとか防ぐことができるが、もしこれ以上の威力の物がきたら⋯⋯。
「ふっふっふ⋯⋯中々頑丈な楯じゃないか」
「が、学園長の剣もまあまあ威力がありますね」
くそっ! あの笑みは【守護の楯】が削られていることがわかっているな。
だが向こうの攻撃が止まない限り、【守護の楯】を解くことはできない。
これじゃあさっきシルヴィアさんと戦った時と同じじゃないか。仲間がいるならともかく、この状態で何とかする方法を考えないといざ魔物と戦って同じ状況になった時殺られるぞ。
まあそれは生きて帰ることが出来たら考えよう⋯⋯生きて出ることができたら⋯⋯。
ちっ! いつになったらこの攻撃は終わるんだ。
正直俺の魔力は残り少ない。それに比べて学園長はまだまだ余裕があり、次々と白く輝く剣を召喚して、こちらに向かって放ってくる。
俺は連戦ということもあるが、向こうは神具を持っているため、バフがかかって魔力も上がっているから、どう考えても力尽きるのは俺の方が先だ。
どうする! このままだと⋯⋯。
けれど俺が考えを巡らせている中、剣の召喚が突如収まり、遂には学園長が持っている神具のみになった。
「なぜだ⁉️ 魔力切れか⁉️」
俺は【守護の楯】を解除しようとする。
「いやちょっと待て! 学園長の神具に魔力が集まってないか⁉️」
これは魔力切れなんかじゃない! 【守護の楯】をぶち破るために魔力を集束して、強烈な一撃を放とうしているんだ!
ただでさえ、空気の楯が削られてるのにそんな攻撃を食らったら――。
俺は【守護の楯】を解除してかわすことを選択する。
「食らいたまえ⋯⋯これが私の必殺技だ!」
クラウ・ソラスから凄まじい光を放たれ、学園長が接近してくる。
「あんなもの食らったら確実に死ぬぞ!」
おそらくあの剣は、かなりの威力を秘めているはず。ただ前後左右にかわすだけだと直撃を食らわなくても、その衝撃で殺られてしまうかもしれない。
それなら!
「【光輝剣】!」
上段から学園長の必殺技が振り下ろされる。
「死んでたまるか! 【空気噴出】」
俺は魔法を唱え、猛スピードで上空へと逃れると、先ほどまでいた闘技場は、【光輝剣】によって跡形もなく砕け散った。
「し、死ぬところだった⋯⋯だが闘技場も壊れてしまったので模擬戦は終わりだ」
俺は自分の命が助かったと安堵し、命があることに、喜びに打ち震えていたその時。
「まだ終わってないぞ⋯⋯リクトくん」
背後から学園長の声が聞こえた。
「ば、ばかな! 【空気噴出】を使った俺と同じくらい飛ぶなんて!」
「空中に剣を召喚し、それを足場にして昇ってきたのだよ」
完全に油断していた! 俺は直ぐ様後ろを振り向こうとするが、それを学園長が許すはずもなく、背後から蹴られ、某少年誌の格闘マンガのキャラのように地面に叩きつけられて、俺は意識を失った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。もし少しでも気にいって頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。




