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第7話 予想外の展開と俺

事態は常に最悪な方向に考えておきましょう。

 模擬戦が終わってから10分後。


「なんだ、皆だらしないぞ!」


 意識を取り戻したクラスメート達は、19対1で負けた情けなさに声を出すこともできない。


「首席の実力は本当だったんだな」

「手も足もでなかったよ⋯⋯自分から全員を相手するっていうだけはあるね」


 それはセリカ先生が勝手に捏造したことなんだが⋯⋯。


「ちくしょう⋯⋯俺達の敗けだ。お前はシルヴィアさんと付き合う資格があるよ」

「彼女を⋯⋯シルヴィアさんを幸せにしろよな」


 なんだ⋯⋯この彼女を賭けて決闘をして、勝ったお前に託す的な展開は。

 勘違いも甚だしい、俺はシルヴィアさんに殺されかけたんだぞ。

 そんな中、当の本人であるシルヴィアさんも俺の方に向かってきて、右手を差し出してくる。


「とても良い勝負でした。また今度手合わせをお願いします」


 えっ? この娘本気で言ってるの? さっき俺を亡き者にしようと覇王の魔法まで使ってきたじゃん。

 だがその表情は初めて見た時と同じように、清純派アイドルの雰囲気を出していて、とてもあの狂気染みたシルヴィアさんと同一人物だと思えない。

 まさかダークサイドに堕ちた時の記憶はないのか? それともこのさわやかな笑顔は演技?

 もし演技だとしたらアカデミー賞の主演女優賞をもらえるだろう。


 俺は何か罠がないか、恐る恐るシルヴィアさんの手を握る。


 ふう⋯⋯何もないか。俺の考えすぎだったようだ。

 とりあえずこの理不尽な模擬戦が終わって良かった。

 俺は安堵のため息をついたのも束の間、突如セリカ先生が声を上げる。


「さあリクト⋯⋯チュートリアルは終わりだ。次は私と戦ってもらおうか」

「えっ? 今俺は模擬戦をしたばかりですけど」


 この人は何を言っているんだ⋯⋯どこの世界にチュートリアルの後にボスバトルをするゲームがあるんだ!


「いやあ⋯⋯最初は戦う気はなかったんだが、お前の戦いを見て魔法士の血が騒いでしまってな」


 正直お断りしたいが、先生の眼が早く闘技場に上がってこい⋯⋯いや上がれと言っている。

 おそらくもしここで断ったらこれからの一年間、セリカ先生の手によって理不尽な扱いを受けることは間違いない。


「先生がリクトと戦うのか⁉️」

「ランキング12位で、ブラッドホラーの異名を持っている先生の戦いが見れるなんて」


 ブ、ブラッドホラー? 日本語にすると血の戦慄だ。な、何だかすごい恐ろしい異名だな。まさか俺を切り裂いて血の雨でも降らせるつもりなのか⁉️

 

「俺達の仇を取ってくれるとは⋯⋯なんて優しい先生だ」


 俺には優しくないけどな。

 くそっ! クラスメートの男共からも、闘技場に上がれ的な雰囲気をかもしだしていやがる。


 ちくしょう! もうセリカ先生と戦うしかないのか⁉️

 だが俺が諦めかけたその時。


「少しやりすぎてはないかね⋯⋯一生徒とランキング12位の君が戦うなど」

「が、学園長⁉️」


 闘技場の観覧席から現れたのは、周りを威圧するかのような闘気を纏ったこのフェザー学園の長であるダーカスであった。


「大怪我でもしたらどうするのかね。学園初日にそんな不祥事を起こされたら、来年この学園を希望する者が減ってしまうではないか」

「それは⋯⋯」


 さすがのセリカ先生も、雇い主である学園長には逆らえないらしい。

 いいぞ、もっと言ってくれ!


「君が戦いたい気持ちもわかる。だが今回は諦めてくれ」

「ですが生徒と戦って実力を把握するのも教育者の役目では?」


 教育者らしからぬ言動をしてきたあなたから、そんなセリフが出ることに俺はビックリだ。


「だがセリカくんはバトルが白熱した時に、リクトくんを再起不能にしない自信はあるのかね」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 おい! 黙ってないでそこは嘘でもいいからそんな事ありませんって言ってくれよ! この人は俺を殺す気だったのか!


「これは学園長命令だ!」

「⋯⋯はい」


 学園長が権力を使ってセリカ先生を説得する姿は、とても頼もしく見えた。今だけはお礼を言わせてもらおう⋯⋯ありがとう。


 突っ込みどころが満載だったけど、とりあえず俺の命は護られたので俺は安堵のため息をつく。


「しかし!」


 しかし?


「このまま終わったらAクラスの諸君も興醒めだろう⋯⋯セリカくんの代わりにこの私がリクトくんと戦うとしよう」

「「「「「えーっ!」」」」」


 闘技場に俺を含めたAクラスの声が響き渡る。


「マジか! ランキング1位の無限の剣聖の戦いが見れるのか!」

「私Aクラスで良かったぁ」

「ということは学園長が俺達の仇を取ってくれると」


 クラスメート達が学園長のバトルが見れることに騒ぎ立てる。


「いやいやいやいや! 何言ってるんですか! 益々俺が死ぬ確率が高くなるじゃないですか」

「ただの模擬戦じゃないか⋯⋯大袈裟だなあ。君は」


 学園長は俺にだけゲスい笑みを見せて、皆には模擬戦であることを強調する。

 この人⋯⋯シャル姉を夜の修練に付き合わせたことをまだ根に持ってるな。模擬戦に見せかけて俺を殺る気だ。


「おいリクト、いいじゃねえか模擬戦くらい」

「代われるなら私がダーカス学園長と手合わせしたいわよ」

「そのまま死んでしまえ⋯⋯そうすればシルヴィアさんは僕と⋯⋯」


 こ、こいつら。無理他人事だと思いやがって。チュートリアルからいきなりラスボスと戦わされるこっちの身にもなってみろ。


「リクトくん⋯⋯早く上がりたまえ」

「やだ! と言ったら?」

「学園長命令だ!」


 くそ! さっきは頼もしく見えた権力が、今は悪魔に見える。まさか戦わなかったら退学とでもいいたいのか。


「やーれ、やーれ、やーれ」


 クラスメートの男子達から学園長と戦えコールが湧いてくる。


「ほんとは私が殺りたかったがしかたない。早く闘技場に上がれリクト!」


 やっぱり俺を殺すつもりだったのかこの人は⁉️


 ちくしょう! もう俺に逃げ場はない。こうなったら俺が学園長を倒して皆の前で恥をかかせてやる!


 俺は覚悟を決めて闘技場に上がり、学園長の前に対峙する。


 こうしてクラスメートとのレクリエーションが、なぜか学園長と戦う事態になってしまったリクトであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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