第1話 ひったくり犯と俺
新章になります。
小鳥が囀ずり、朝日が照らす通学路。
残り数日であったが、15歳以下の学園での生活はシャル姉の女の子二人侍らせていた発言により、最悪のものとなった。
特に野郎達からは嫉妬という名の憎悪の視線を一身に浴びて、ストレスでどうにかなりそうだったがそれも昨日で終わりだ。
なぜなら今日から俺はフェザー学園へと通うため、もう彼ら彼女らとは会うことはないから。
俺は今、過去を忘れ、新たな気持ちでこれから通う学舎であるフェザー学園へと向かっている。
「おはようリクトちゃん」
薄いブルーのワンピースに身を包んだ、可憐な少女が俺に声をかけてきた。
「シャル姉おはよう」
そういえばシャル姉とは、教室で暴露されて以来会ってなかったな。
「その制服姿⋯⋯カッコいいね。リクトちゃんに似合ってるよ」
「ありがとう⋯⋯シャル姉もその制服姿、似合ってると思うぞ」
「そう? ふふ⋯⋯ありがとう」
あれ? 何だか普通に話せてるな?
てっきりまだトア達と一緒に寝たことを怒っていると思ったけどそうじゃないらしい。
ここはその話題には触れない方がいいのかもしれないな。
「そういえばリクトちゃん」
「な、何?」
「ベットを買ったって聞いたけど本当なの?」
「そ、そうだよ」
やはりなかったことにはしてくれなさそうだ。
これからの答えを間違えるとシャル姉に何をされるか⋯⋯。
「寮にベットが1つしかなかったから、トアとマリーが元々部屋にあったベットで寝てるんだ」
「それじゃあリクトちゃんは新しく買ったベットで寝てるの?」
「そうだよ。部屋も別々でね」
この回答で間違いないはず。
「そうなんだ⋯⋯良かったね新しいベットが来て」
シャル姉はこちらを向いて、ニッコリと笑顔を浮かべてきたから俺は安堵する。
どうやら完全にシャル姉の機嫌は治っているようだ。
「それにしても俺がベットを買ったことをよく知ってたね」
「ふふ⋯⋯知りたい?」
シャル姉は俺の言葉を聞いて、突如得たいのしれない笑顔をしたため、俺の背筋はゾクリとする。
「知らない方がいいかもよ?」
「そ、そうだね⋯⋯聞くのをやめとくよ」
知らないで後悔するより、知って後悔した方がいいという言葉がこの世界にはあるが、俺は今その逆で知って後悔するより、知らないで後悔した方がいいという言葉が頭に浮かんだ。
まさかとは思うけど、シャル姉は元の世界で俗にいうストーカー⋯⋯いやそんなはずはない。たぶんトアやマリーさんに聞いたり、偶々俺がベットを購入する所を見たに違いない。
考えると怖くなってきたので、俺は何も聞かなかったことを選択した。
「それじゃあリクトちゃんの制服姿も見れたしお姉ちゃん先に行くね」
「あれ? 一緒に行かないの?」
「今日は入学式の準備があるから⋯⋯また後で学園でね」
そしてシャル姉は駆け足でこの場を去っていった。
朝から忙しいな⋯⋯シャル姉は。
俺はシャル姉を見送りながら1人フェザー学園へと足を向けた。
「きゃあ!」
都市ベルファイアの中央通りを歩いていると、突如どこからか悲鳴が聞こえてきた。
「何だ?」
女性の叫び声の後、辺りが騒然とし始める。
「ひったくりよ! 誰か捕まえて!」
「ちっ!」
フードを被り、顔が見えない奴が颯爽とこちらに向かってきている。
おそらくこいつが犯人か。このまま逃がす訳にはいかない。俺は【空気失魔法】を放とうとしたが、背後から俺を追い越すように何かが飛び出してきた。
「待ちなさい!」
凛とした声が響き渡ると1人の少女が、ロッドを構えひったくり犯とおぼしき者と対峙する。
ん? 少女が着ているのはフェザー学園の制服だ。
ということは魔法士か。
「死にたくなければ退きやがれ!」
犯人はナイフを手に少女に襲いかかるが、少女はひらりと鮮やかに攻撃をかわし、ロッドから無属性の魔力弾を犯人に撃ち込む。
「ぎゃあ!」
犯人は少女が放った魔力弾を胸に食らい、お店の壁まで吹き飛ばされ、そして顔を隠していたフードが捲れる。
中身は40代くらいの中年の男だった。
顔で人を判断したくないが、人相はいかにも盗賊という悪人面で、勝負あったかのように見えたが、犯人が飛ばされた位置が最悪だ。
「あっ⋯⋯あぁ⋯⋯たす⋯⋯けて⋯⋯」
犯人の側には10歳くらいの男の子がおり、直ぐ様ナイフを男の子の首もとに突きつける。
「う、動くんじゃねえ! 動いたからこのガキをぶっ殺すぞ!」
「くっ!」
さすがの少女も男の子を人質に捕られたら動くことができず、犯人を倒すことができない。
「まずは武器を捨てろ! おっと周りの奴らも下手な真似をしたらどうなるかわかってるな」
少女以外にも魔法士がいて、男の子を助けようと魔法を放とうとするが、犯人に気づかれ、持っている武器を地面に置くこととなる。
「てめえ⋯⋯さっきはよくもやってくれたな」
先程少女に攻撃されたことを根に持っているのか、犯人は少女を睨み付けるが、急に下世話な笑みを浮かべた。
「よく見ると美人じゃねえか⋯⋯おまえここでストリップをしろ」
ス、ストリップ⋯⋯だと⋯⋯。
「ストリップ⋯⋯ですか?」
しかし少女は犯人の言っている意味がわからないのか、頭に疑問点を浮かべている。
「服を脱げって言ってるんだよ! 早くしねえとガキを殺すぞ!」
「お、お姉ちゃん⋯⋯たすけて⋯⋯」
犯人は行動に移さない少女に苛立ちを覚え、早く服を脱ぐように促す。
「わ、わかりました⋯⋯服を脱ぎます⋯⋯だからその子には手を出さないで下さい」
少女は男の子の助けを求める声を聞いてか、服を脱ぐ決意をする。
まずは制服の上着を⋯⋯しかしそこで手が止まってしまう。
「うぅ⋯⋯」
それもそのはず、次の一枚はワイシャツかスカートになってしまう。どちらを脱いでも下着が見えてしまうことは間違いない。
「早くしろ!」
「いたっ!」
犯人は男の子の首を線を引くように薄皮一枚なぞると、うっすらと赤いものが滴り落ちた。
「わかりました! ⋯⋯脱ぎます。だからやめて下さい」
そう言って手を衣服に持っていく。
どうやら下から脱ぐことを決意し、少女はスカートのチャックに手を伸ばした。
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